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相乗効果を最大化 実店舗×ネットの戦略

「デジタル購買」の不満を「リアル店舗」が解決する時代へ

室井淳司(アーキセプトシティ)

実店舗の存在価値が改めて問われる昨今。ブランドの「リアル体験」を軸に、空間とデジタルを融合したクリエティブディレクションやサービス開発を行うアーキセプトシティの室井淳司代表が、店舗における購買行動パターンをもとに解説する。

購買行動パターンから見る店舗とECのこれから

これからの時代、店舗はどのような価値を提供して集客を図るか。小売り事業者であれば悩みどころですが、実のところ、店舗をどうするか、Eコマース(EC)をどうするか、などとチャネルを分けて考えるようでは、現代の消費者のニーズに応えることはむずかしいでしょう。

本質的に、消費者は店舗もECも必要としていません。それらは欲しいモノを手に入れるための手段であり、店舗やEC自体に価値があるわけではありません。私も店舗ブランディングなどに携わる身ではありますが、それだからこそ、こうした実態から目を背けてはいけないと考えています。

ゆえに、消費者の購買行動や欲求を分析し、さまざまなチャネルを駆使して、彼ら・彼女らの満足度を高める視点が必要です。

では、ECが軸となった時代の消費者の購買行動や欲求を探っていきましょう。

ECは物理的に身体を移動させることなく、手元にあるスマートフォンなどの画面の上で、ある店舗から別の店舗へと、瞬間的に移動できます。店舗の営業時間は関係ありません。商品のスペックを調べられるだけでなく、競合商品や別の店舗と比較・検討したり、他人のおすすめを即時に確認したりすることもできます。

在庫状況を確認するためにスタッフを捕まえて、5分待たされることもありません。ここまでみると、ECは「時間」「価格」「情報の正確さ」という面で合理的で、リアル店舗の必要性は感じません。

しかし、一般的には、ECで買っても翌日まで商品は手元にありません。商品宅配時に在宅しているかという問題もあります。検索商品に関連したおすすめは出てきても、意表を突くような商品と出合うことは多くありません。

ECで商品の情報や口コミは手に入っても、実物を手にとって確めることもできません。売り手の人柄が見えないことにも多少の不安が募ります。ECによって買い物はとても便利になりましたが、まだまだ消費者の欲求が満たされているとは言えなさそうです。

では、消費者には今後どのような購買行動・欲求が生まれるでしょうか。今回は4つの購買行動パターンを設定し、訪れる未来を想定しながら明らかにしてみたいと思います。

(1)同一商品の無思考な購買欲求

ECで水を買い、宅配で受け取る生活をしている人に、店舗に水を買いに来てもらうための施策を考えよう……こうした発想自体が、消費者のニーズに反しています。この消費者のさらなる欲求は何でしょうか。彼・彼女にとってリスクとなるのは、「水を買うことを忘れる」「宅配を受け取れない」ことです。

この欲求は今後こう満たされていきます。水の買い忘れにはAIが対応し、さらにその水を最も安く、早く買えるECサイトを選ぶこともできるようになるでしょう。

受け取れないリスクは、ある人は自宅の宅配ボックスが、ある人は普及し始めた駅の宅配ボックスが、ある人は近くのコンビニの宅配ボックスサービスが解決してくれるでしょう。また、コンビニの商圏内を移動するデリバリースタッフが帰宅後5分で持って来てくれるかもしれません。

デリバリースタッフが人間かドローンかは消費者にとってはどうでもいい話です。この欲求のポイントは、「気づいたら手元に補充されている」ことです。

(2)即時的な購買欲求

これまでホッチキスが欲しいという突発的な欲求に対して応えてきたのはコンビニをはじめとした、物理的に近距離にある実店舗でした。この消費者の欲求は、商品の評判をECサイトで調べてから安く買いたいというものではなく、「いますぐ」に手に入れることです。ホッチキスが近隣のコンビニにあるか知りたいし、いますぐ誰かが持って来てくれたらもっといいはずです …

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