南仏発の化粧品ブランド、ロクシタンは世界90カ国以上で展開し、日本では100以上の店舗を構える。同社は東京・渋谷スクランブル交差点前に路面店を構えるなど店舗運営に力を入れつつ、Eコマース(EC)での売り上げも高めている。それらはどのような協働により、相乗的な売り上げアップにつながっているのか。
EC利用率と同時に質の向上にも注力
──貴社では、店舗とECの役割をどのように考えていますか。
麻生晶子:どちらもお客さまにサービスを提供する場であり、基本的な役割は同じです。また、店舗とECで訴求方法が異なるとお客さまを混乱させてしまい、ブランディングの妨げにもなります。広告ひとつとっても、店舗とEC、同じようなトーンで制作し、一貫性を持たせています。
どのプロモーションでも、企画段階から店舗担当者、EC担当者、マーケティング担当者など全員が集まって意見を出し合っています。そうすると、それぞれの視点で企画を考案・検証でき、より良いプロモーションを生み出せるのです。さらに、最終段階では「店舗ではこうやる」「デジタルではこうやる」というように、社内で精査してから公開するようにしています。
──店舗とECの連携として、どのような取り組みを実施していますか。
麻生:やはり、店舗のスタッフは「ECに売り上げを奪われているのではないか」と不安に思う場合もあります。こうした懸念はスタッフの販売意欲を削いでしまうので、昨年から「オムニチャネルインセンティブ」を導入しました。
これは、お客さまが店舗以外で購入した売り上げも会員データで紐づけて、実店舗の売り上げとしてカウントする仕組みです。店舗で接客したお客さまが後日ECから製品を購入すると、その売り上げが店舗の評価の対象になります。店頭で購入しなくても、あとでECで買っていただければ評価されるので、より意欲的に製品を紹介できるようになっています。
安倍もと子:オムニチャネル化を推進してから、スタッフがお客さまのメールアドレスなどの情報を積極的にお尋ねするようになり、情報獲得率やオンラインへの誘導率が飛躍的に上がりました。お客さまにとっても、店舗でもECでも購入できることは便利でしょうから、双方にメリットがあるかと思います。
メールアドレス情報を登録すれば、店舗からのダイレクトメールだけでなくメールマガジンも送れるようになりますが、お客さまにとって得になるような、有益な情報などを多く発信するようになりました。またその獲得を評価につなげるようになり、確実にスタッフのモチベーションアップにつながっていますね。
麻生:店舗はお客さまにブランドの魅力をしっかり伝える広告塔でもあると考えているため、むやみに数を増やさず、慎重に出店しています。「店舗でお客さまの心を掴み、オンラインで定期購入をしていただく」という流れを作り、ブランディングをしながら売り上げをアップさせていくことが理想だと考えているんです。
安倍:一方のECは利用率も徐々に高まっているので、利用率と同時に質の向上に注力しています。たとえば、スキンケア製品はきちんとカウンセリングを受けたいと考える方が多く、ECよりも店舗での購入率が高いです。ただ、理想はどのチャネルでも高いレベルのサービスを提供することなので、ECでも店舗レベルのカウンセリングができるように、カスタマー体験をよりリッチにするチャットサービスなど、コンテンツの充実を目指しています。
複数の販売チャネルを利用しているお客さまは、ひとつのチャネルだけを利用しているお客さまよりもフリークエンシー(購入頻度)が高いというデータも出ているので、今後もオムニチャネルに力を入れていきたいと考えています …