"インスタ映え"といった言葉に代表されるように、"映える"デザインが求められ、売り上げをも左右しつつある商品パッケージ。店頭とECとで、販路に応じてどのように考えればいいのか。国内だけでなく海外商品のパッケージデザインも手掛けるブラビス・インターナショナルの笹田陽勇氏が解説する。
EC上で存在感を放つパッケージデザインとは
パッケージデザインとEコマース(EC)の関係を語る上で、まずはECが重要な役割を占める中国の事情について、食品や飲料のパッケージデザインを中心に触れてみたいと思います。
中国は国土が広いため、中国全土を網羅できる商品が少ないという実情があります。世界に商品を行き渡らせるより、まずは中国で全国区のブランドになることを目指すケースが多いです。しかし、実店舗にあまねく販路を築くのは現実的ではありません。そこで、ECが非常に重要な消費プラットフォームとなります。
今日では、当社が中国の現地クライアントと取り組むプロジェクトの半分以上は、EC専用で販売する商品のパッケージデザインとなっています。パッケージデザイン開発では、ECと店頭の両方で販売するケースとECだけで販売するケースの2パターンがあります。
前者の場合は店頭販売に重きを置いて、店頭用に開発したパッケージデザインをECでも使用することがほとんどです。後者の場合は輸送用の箱に入れば、形状、サイズ、素材などは自由で、既視感のないユニークなパッケージデザインが求められます。
EC上で独自性を発揮し、他社製品との明確な差別化を図るパッケージデザイン開発では、ブランドエクイティ(ブランドを想起させるパッケージ形状やグラフィック要素)に力を入れた開発が重視されます。
具体的に注力するブランドエクイティは、(1)ブランドカラー、(2)ブランドロゴ、(3)ブランドロゴタイプ、(4)形状・素材、(5)グラフィックフォーマットの5つです。
その理由は、ユニークなブランドエクイティを構築すれば、ECサイトでも商品が目に留まりやすくなるからです。ブランドのコミュニケーション力を強化するだけでなく、リピート購入者が商品を探せないといった販売機会の逸失を防ぐ効果もあります。
中国のEC市場は競合商品数が膨大なため、ユニークな形状の構築においてクライアントは投資を惜しみません。たとえ、パッケージデザイン上のグラフィック要素がECサイト上で少々見えにくくても、形状がユニークであれば探しやすく、またソーシャルメディアで拡散されやすいなど、購入後にも新鮮な使用体験を提供できる可能性があることが理由です …