チョコレートデザインは、チョコレート菓子ブランド「バニラビーンズ」の店舗をECとリアルに構えている。ECでの売り上げを基盤にしながら、実店舗では新規顧客が常に来店客の5割を占める同社は、ECと実店舗をいかにして融合し、どのような相乗効果を生み出しているのか。

ECで全国各地の継続的なリピーターを獲得
チョコレートを使用した洋菓子を製造・販売するチョコレートデザインは、2000年にインターネットストア「バニラビーンズ」を開設して創業した。以降、数年間はECのみで運営していたが、現在では神奈川県内に2軒の実店舗を構え、ECと実店舗の両輪で販売している。
同社の代表取締役である八木克尚氏は、ECと実店舗それぞれの位置づけについて、「ECは販売のツールとして、実店舗はブランドの雰囲気や価値観を直接体験してもらう場所として考えています」と話す。もともとECで販売をスタートした当初から、実店舗の出店を視野に入れていたという。最初にECのみで出店した理由は、低コストで開業できるためだった。
「ECでもブランドの雰囲気や価値観を伝えられないわけではありませんが、たとえばチョコレートの香りを楽しむ、原料であるカカオに触れる、チョコレートを実際につくってみるといった体験はできません。その代わり実店舗では、実店舗でしかできないサービスを中心に提供しようと考えています」
現在、ブランド全体の売り上げ比率は、ECが7割で実店舗が3割。実店舗における利用客の内訳は、約半数がよく実店舗を訪れるリピーターだが、残りの半数は新規客だという。背景には店舗の立地が関係しており、そこにはECも含めたブランド全体のねらいがある。
「実店舗は、ブランドが体験できる場所としての役割のほかに、ブランドを知ってもらうための窓口としての役割も担っています。そのためには立地がポイントで、広い範囲から人が集まるところが望ましい。そこで、まずはみなとみらい(横浜市)という観光客や旅行客が訪れやすい場所を選択しました。実は、実店舗の新規客の多くは旅行客で、旅行雑誌や旅行の情報サイトを通じて店舗を知ったり、店舗の前を通りかかったりしたことがきっかけで来店します。ただ、そういった遠方からの旅行客は実店舗でのリピートが難しいため、ECを通じてブランドに戻ってきてもらうようにする。実店舗を入口とし、ECを通じて全国各地のお客さまにリピートしてもらう導線をつくっているんです」
八木社長は「ECと実店舗の売り上げ比率は同程度が理想」とも話す。ことしは神奈川県内で新たに2店舗の出店を予定し、実店舗の売り上げ比率は上がる見込みだ。

公式オンラインショップでも店舗と同様の世界観を体現している。
実店舗は最も需要な顧客とのタッチポイント
実店舗ではリアルでしか体験できないことの一つとして、人の温かみを感じてもらうことも大切にしている。目指しているのは、単にていねいな接客をするだけではなく、店舗スタッフとの会話を楽しんでもらうことだ。
バニラビーンズで製造するチョコレートには、すべてフェアトレードチョコレートを用いている。スタッフはそういった商品の裏側にあるストーリーを伝える役割を担い、忙しい時間帯以外は積極的に来店客に話しかけるようにしているという。さらに、できるだけ一人ひとりの来店客とゆっくり会話ができるよう、スタッフの人員は一般的な店舗よりも多く配置している …