キリンビバレッジがEコマース(EC)とカタログ通販のみで販売する「生姜とハーブのぬくもり麦茶 moogy(ムーギー)」がいま女性の間で支持を得ている。常識を覆す斬新なパッケージは、どのようにして作られたのか。「moogy」の開発を担当する同社デザイナーの寺島愛子氏と水上寛子氏に聞いた。
女性の心を掴んだ 暮らしになじむパッケージ
「生姜とハーブのぬくもり麦茶 moogy(ムーギー)」は、「脱・飲みもの」をテーマした斬新なパッケージが最大の特徴だ。全16種類あるパッケージはテキスタイルのようで、商品名も目立たない。商品特徴などの説明も最小限に留められていることもユニークだ。商品ロゴやパッケージの柄、リサイクルマークは手描きでデザインしており、裏面の表示も手書き風の書体を採用するなど温かみのある印象を受ける。
パッケージは「グッドデザイン賞2016」や「日本パッケージデザイン大賞2017 一般飲料 銀賞」、「Topawards Asia」など数多くの賞を受賞し、高く評価されている。
担当したのはキリンビバレッジの女性デザイナー3人だ。働く女性向けのインターネット通販サービス「LOHACO(ロハコ)」が2015年10月に開催した、TOKYO DESIGN WEEKで「暮らしに馴染む」をテーマにしたブースを出展。キリンビバレッジも依頼を受け、プロジェクトがスタートした。手を挙げた担当デザイナーのひとり、寺島愛子氏は「『暮らしになじむ』をテーマに商品を開発しないか、と相談され、すぐにやりたい!と思いました」と話す。
「LOHACO」のユーザーは20歳代~40歳代の働く女性。担当デザイナーはまさにターゲット層でもあった。女性の味方になる飲みものを目指し、コンセプトは「いいわたし、いい暮らし。」に設定。「仕事や家事で忙しく日々を過ごす女性が喜ぶものってなんだろう、自分らしさを大事にして心地よく過ごせるものってなんだろうと考えて、ゼロから商品を作っていきました」と水上寛子氏は振り返る。
ターゲットに据えた女性の健康課題で、最も高い割合を占めるのは「冷え」。中味は、キリンの健康プロジェクトで発見したぬくもり素材「焙煎大麦」に、生姜やカモミールなどを加えた健康志向のブレンド麦茶にした。また、飲料では一般的に、「ぬるいとおいしくなくなる」という声もあがりやすいため、常温でもおいしく感じられるよう工夫した。ほかにもカフェインゼロ・無糖など女性が喜ぶ商品設計にしている。
ECならではのパッケージに挑戦
人が店頭で飲料を選ぶまでにかかる時間は、俗に約2秒と言われている。パッケージは、商品コンセプトを体現することはもちろんだが、何の商品かが一目で理解できるわかりやすさが求められる。通常なら商品名を大きく表示し、中味の見えるフィルムにして購入時の安心感を与えたり、直感的に"おいしそう"と感じさせることが重要とされている …