ロフトは昨年6月、旗艦店となる「銀座ロフト」をオープンした。同店ではこれまで、数々のユニークな体験型の売り場を展開し、話題づくりを図ってきた。実店舗にいまだ圧倒的な強みを持つ同社に、「銀座ロフト」の売り場づくりの考え方や、アプリ・ネットストア(EC)を武器としたオムニチャネル戦略について聞いた。
ECの役割は、実店舗でできないことを補完すること
ロフトは昨年6月、次世代へ向けたフラッグシップストアとして「銀座ロフト」をオープンした。単に商品をそろえるだけでなく、実店舗ならではの体験を目指した売り場づくりやイベント企画で、来店客に新たな価値を提供し続けている。
一方、Eコマース(EC)には2015年に着手した。現在は主要なデジタルコンテンツとしてECサイト「ロフトネットストア」や、商品情報やイベント情報、割引クーポン機能などを持つアプリ「ロフトアプリ」などを運用している。
ECの売り上げシェアは全社でシェア1%と、絶対額は小さいが、同社の執行役員でオムニチャネル商品開発部部長の菅野弘太郎氏は、「ロフトにおけるECは、あくまでも実店舗ではできないことを補完し、実店舗の活性化を促すものと位置づけています」と語る。
ECでは、オンラインの強みを生かして取り組んでいることが3つある。1つめは、顧客の利便性の改善だ。最近では実店舗で買い物をする場合でも、事前にインターネットで商品を比較したり、商品の在庫があるかどうかを調べたりする人が多い。また、実店舗に足を運んだものの在庫がなかった場合にはECで注文する顧客も多い。
そのため、ロフトはインターネット上の情報を充実させることで、「顧客が詳細な商品情報を知る」「在庫を調べる」「商品を注文する」といった行動を自社のアプリやEC内でスムーズにできるよう、環境を整えることを目指している。
2つめは、新カテゴリーの商品を仕入れる際の試験的な場としての活用。実店舗で新商品の反響を見ようとすると、展開店舗以外の地域では商品を買えない顧客がどうしても出てきてしまう。一方ECなら、すべての顧客が購入可能である。
また、既存のカテゴリーを横断するような切り口で商品を集め、売り場を展開したいと考えた場合にも、実店舗だと結局、どのカテゴリーの売り場でスペースを用意するのか、在庫管理は誰が行うのか、売り上げはどの売り場に計上するかなど、細かな問題が多く発生して、着地までに時間がかかる。その点、ECには売り場という物理的な制限がないため、複数のカテゴリーから商品を集めた新しい売り場展開に積極的にチャレンジできる利点があるという。
3つめは、在庫リスクの軽減だ。一つの商品企画を複数の実店舗で展開すると、店舗数分の在庫が必要になるが、ECであれば1店舗分の在庫で広い顧客にアプローチできる。
ECでは、商品の魅力を立体的に伝える工夫を
現在、「ロフトネットストア」の会員数は32万人。また、前年12月の1日のサイト訪問者数は7万人と、渋谷店の1日の平均来店者数である2万人をはるかに上回る。にもかかわらずECの売り上げがまだ小さいのは、雑貨は一つひとつが異なる機能やデザインを持つことから、ECやアプリで閲覧した商品で気になったものがあれば、実際に試してみたい、触ってみたいと考える人が多いためだという。
「『ロフトアプリ』の商品情報ページには、『ネットストアでみる』と『在庫あり店舗をみる』という二種類のバナーが用意されています。それぞれの1カ月のクリック数を比較すると、『在庫あり店舗をみる』は『ネットストアでみる』の約6.7倍のクリック数があった。つまり、多くの人が商品を購入する前にまずは店頭で手に取ってみたいと考えていることがわかったんです」(菅野氏)
ECやアプリが実店舗への導線になっていることがわかり、ECやアプリを通じてより商品の魅力を伝えたいと菅野氏は考えているというが、サイト上に商品画像がただ並んでいるだけの状態では、何を購入しようか迷っている人には訴求できない。そこでECでは情報の「リッチ化」を、アプリでは「コトキジ」で鮮度のある情報を発信している。
情報のリッチ化とは、商品紹介に多くの画像やストーリーを盛り込むことで、より立体的に商品の魅力を感じてもらうようにすることだ。たとえば、ロフトが取り扱う商品の中で売り上げシェアの高いお弁当箱は、従来のサイトの売り場では単に箱が並んでいるだけに見え、購買検討の際にあまり魅力を感じることはできなかった。しかし、そのお弁当箱においしそうなおかずが詰まっていれば、お弁当箱も魅力的に見えるかもしれない …