買い物行動をデータで捉え、個々の消費者理解を深める
国内市場に大幅な成長が期待できないこれからの時代、大半のメーカーにとっては、従来からの売り上げ・シェア競争に加え、優良顧客の獲得競争が大きな課題となっている。そのためにどのようにデータを駆使するべきか。博報堂 博報堂買物研究所の前嶋誠一郎氏が解説する。
デジタル販促 瞬間を捉えて売上増
これまで多くの企業や店舗にとって欠かすことのできなかった販促手法がいま、大きく変わりつつある。店舗と消費者の情報接点も広がり、従来型のアナログな販促手法もデジタルと融合させることで、顧客に応じてパーソナライズした施策が可能になるなどの進化を遂げている。ここでは【プリペイドカード】【チラシ】【メルマガ】【スタンプカード】の手法を取り上げ、その進化や代替されるサービスについて考える。
先進諸国に比べてクレジットカード利用率が低いと言われる日本だが、多様化する決済手段を背景にしたアプローチが広がりを見せ、顧客情報を取得する手段としてカードをデジタル化する企業も増えている。具体的にはどのような取り組みがあるのか。
いまや多くの企業がポイントカードなどを通じて顧客情報を取得し、販促施策に活かしている。最近はオンラインを中心にプリペイドカードを発行する企業も増えているが、パルコが2016年12月1日より提供を開始した「PARCO プリカ」はリアル店舗で使えるカードだ。
同社では以前より、ハウスカード(クレジットカード)である「PARCOカード」を軸としたCRMを強化すべく、パルコで買い物をすることによる多様な特典を提供し、カード会員の獲得に力を入れてきた。しかしクレジットカード利用率が低い日本では現金で支払いをする来店客はいまだに多く、そうした消費者に対して何とかカード使用を促進することができないかを考えていたという。
「これまで、PARCOカードを通じた顧客購買行動の分析などを行ってきましたが、クレジットカードが嫌いという方もいれば、クレジットカードを持ちたくても持てない方も少なくなかったんです。そこで、当社としてもより購買行動を具体的に把握する手法として、手続きが簡単なプリペイドカードを導入するに至りました」と同社のWEB/マーケティング部の鈴木裕氏は話す。
そこで提供されることになったのがチャージ式のプリペイドカード「PARCO プリカ」だ。「クレジットカードとは異なり、入会の審査不要で面倒な手続きはなく、チャージ後すぐに利用が可能です。また利用特典として、ご利用額の0.5%分をキャッシュバックするなど、現金払いよりもお得なサービスも提供していきます」(鈴木氏)。
さらに、スマートフォンアプリ「POCKET PARCO」と連携することで、アプリ内でチャージ残高を確認したり、ショッピングで1円につき1コインのPOCKET PARCOコインを付与。コインを貯めることにより、年間最大3000円分のパルコ優待券がプレゼントされる。顧客の嗜好に合わせたテナント商品やイベント情報などの案内も届く。
若年層の来店客も多く、プリペイドカードの需要は大きいことが見込まれる同社。「スマートフォーンを通じた顧客とのコミュニケーション強化を図ることで、来店促進や購買行動の促進につなげて行きたいと考えています」(鈴木氏)。
新聞の発行部数の減少に伴い、折り込みチラシをはじめとするチラシ市場は、苦戦を強いられている。しかし紙のチラシでも効果を測定できる技術が開発されたことで、チラシの価値が改めて見直される可能性もある。
紙と比較した際のデジタル施策の主な強みは、その成果を検証できることにある。デジタルソリューションの普及はあらゆる施策の効果の測定が求められるようになったことを意味し、その結果、効果検証が難しい紙媒体の予算支出の減少にもつながっている。
そうした中、2016年7月に ...