雑多な商品棚の中でも、どのパッケージにどんな野菜が入っているかひと目で分かる。
その上、赤、オレンジ、紫といった力強い色合いが各野菜の魅力を引き立てている。
ここ数年、地方や農業を盛り上げる方法を、国や企業、個人などさまざまな立場の人が積極的に考え、行動している空気を感じる。特に野菜に関しては、「地方に元気を」ということだけではなく、安全性や美味しさ、産業としてなど、発展の可能性を感じる。
一方で地域産業活性化策の1つとして、ブランドやキャラクターが注目されている。著名なデザイナー、クリエイターの力を借りたブランディングやキャラクター開発が盛んに行われている。
では、パッケージは何ができるだろうか。そんな中、ハワイのセイフウェイの野菜売り場でふと目についたのが、こちらの野菜パッケージである。手頃な量で色々な野菜がセットにされた、いわゆるカット野菜である。サラダにしたり、炒め物に使ったりと便利な商品で日本でもよく売られている。
このパッケージの魅力は「美味しそう」で「何が入っているか分かる」という、パッケージの基本的な役割を忠実に果たしている点にある。「しっかりと野菜の基本情報を伝えるパッケージ」。これを実現することが、今の日本の生鮮パッケージにおいては強い差異化のポイントになるのではないだろうか。野菜の鮮度が高く、栄養があって、美味しい。その価値をパッケージでしっかりと伝えること。
写真のパッケージは、乱雑な売り場、不安定な商品形状を前提に、店頭で視認性を確保し、カラフルな色の対象として野菜の美味しさを演出し、何が入っているかというカット野菜の商品コンセプトを伝えている。
製品には機能的価値と情緒的価値の2つがあり、それぞれがさらに2つに分かれる。機能的価値には「それがないと商品として成り立たなくなってしまう必要最低限の価値」(基本価値)と「さらに利便性を高める価値」(便宜価値)があり、情緒的価値には「五感に訴える価値」(感覚価値)と「商品を持つことで意味や物語を感じさせる価値」(観念価値)がある。一般的にブランドと言われる価値はこの観念価値を中心にしている。
時計を例にすれば、時を刻む=基本機能、標準電波を受信して誤差を自動修正する機能=便宜価値 …