販売促進の専門メディア

           

実例!シニアを捉えるプロモーション

「ゴージャス車両」に「シニア定期」、鉄道業界のシニア向けビジネスのチャンスとは?

村田裕之(村田アソシエイツ代表/東北大学特任教授)

クルーズトレインとして注目を集める、JR九州の「ななつ星 in 九州」。シニア層に対しては、移動のプロセスを優雅に楽しめる仕掛けが必要となる。

高度成長をけん引したインフラ、鉄道産業もシニアシフトとともに新たな成長戦略が求められている。鉄道産業の共通課題は、駅周辺住民の高齢化に伴う旅客減、駅関連施設の利用者減である。しかし、他業界と同様、シニアシフトという変化は新たな需要を生み出しており、それをいかに自社の事業機会に取り込めるかにかかっている。

1

ゴージャス車両でコト消費をモノ消費につなげる

私は、拙著『リタイア・モラトリアム』(07年)で、団塊世代の退職が本格化すると在来線には昼間走る「ゴージャス車両」が復活する、と予想した。ここ数年、ようやくその予想が現実化している。JR九州が10月に運行を開始した、豪華寝台列車「ななつ星in九州」はその代表だ。高級感ある内外装にこだわり、3泊4日または1泊2日の日程で九州を回る。旅行代金は1人15万~55万円と高額だが、60代を中心に来年6月出発分まですでに予約が埋まっているとのことだ。

退職したら必ずやることの筆頭が「旅行」である。ただし、退職者は時間に余裕があるため新幹線で拙速に移動する必要はない。だから、昼間の在来線にゴージャス車両を走らせれば、利用者は間違いなく増える。ただ、多くの注目を浴びている「ななつ星」は定員30人と規模が小さく、料金も高額であることからリピート客がつきにくい可能性もある。収益面でのインパクトはそこまで大きくないのではと考えられる。

一方、こうした「ゴージャス車両」をけん引してきたのは、JRではなく、むしろ私鉄だった。今年の3月、近畿日本鉄道が導入した観光特急「しまかぜ」、12年のクラブツーリズムによる国内初の旅行会社専用列車、もっと昔からあるものでは小田急電鉄の「ロマンスカー」、東武鉄道の「スペーシア」などがその例だ。ところが、これらの私鉄車両は、「しまかぜ」を除くと開発時期が古いため、サービスの質がやや時代遅れになっている。

今後は「ななつ星」のようなハイエンドレベルと現状の私鉄レベルとの間、つまり「中間レベルのゴージャス車両」が受け入れられるだろう。そのモデルは、ヨーロッパ大陸を横断するインターシティ特急のダイニング車両にある。風光明媚な景色を楽しみながら、通過する国ごとに異なるおいしいワインと食事を味わえて、会話も楽しめる。列車とは、単なる移動手段ではなく移動のプロセスを楽しませてくれるもの。このようにシニアのコト消費は、いかに優雅な時間の使い方をリーズナブルに提供できるかが勝負なのだ。

あと62%

この記事は有料会員限定です。購読お申込みで続きをお読みいただけます。

お得なセットプランへの申込みはこちら

実例!シニアを捉えるプロモーション の記事一覧

「ゴージャス車両」に「シニア定期」、鉄道業界のシニア向けビジネスのチャンスとは?(この記事です)
「シニア向け」ではシニアに売れない? 買いたくなる3つのアプローチ
シニアシフトと業界の取るべき方向性(3)~家電メーカー~
百貨店業界に必要なのは「知的新陳代謝型モデル」?
ファミレスもシニアシフト、退職者のための「第三の場所」になりうるか
「半働半遊派」増加、シニアもネットショッパーに...時代性の変化は消費行動に影響するか?

おすすめの連載

特集・連載一覧をみる
販促会議Topへ戻る

無料で読める「本日の記事」を
メールでお届けします。

メールマガジンに登録する