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実例!シニアを捉えるプロモーション

シニアシフトと業界の取るべき方向性(3)~家電メーカー~

村田裕之(村田アソシエイツ代表/東北大学特任教授)

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でんかのヤマグチの店舗外観。周囲に6店もの家電量販店がありながら、15期連続の黒字を達成している。

高度成長期に発展し、成功した産業・業界・業態ほど、シニアシフトへの対応が遅い。特に遅さが目につくのは、食品メーカー、家電メーカーなどの製造業だ。エンドユーザーにはシニア世代も多いのだが、実は多くのメーカーはこれまで消費者のことを見ているようで、あまりよく見てはいなかった。

なぜなら、かつては消費者の動向把握などは、その先の中間卸や量販店、小売業に任せておけばよかったからだ。だが、これからはメーカーも、エンドユーザーのことをさらに詳しく知らなければ、売れるものを作れない時代になっていく。

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シニア顧客のニーズが直接見える仕組みを自前で持つ

シニア市場に進出するためには、まずは何から始めたらいいのか?そんな質問をよく受ける。それに対する一番の答えは、顧客ニーズが見える仕組みを「自前で」持つことだ。

一般に大企業がシニア市場への足がかりとして最初に行うのが、調査会社にアンケート調査、グループインタビューなどの市場調査を依頼することだ。しかし、私が見てきた限り、そうした調査結果の90%は役に立っていない。

なぜなら、調査を依頼する企業が、シニア市場でどのような商品やサービスを生み出して、どういう販路で売り出していくのか、という戦略がないまま、とりあえず市場の状況を調べてみよう、という程度のものが結構多いからだ。

そんなことに割ける予算があるのなら、自社で製造した商品が末端のエンドユーザーの間でどのような売れ方をしているのか、どういう評判になっているのかを、量販店や中間卸経由ではなく、直接、自分たちが知ることのできる仕組みづくりにお金をかけるべきだ。

しかし、それぞれの産業、業界には長年、守り続けてきた商習慣などの暗黙の縛りがある。製造業界にはメーカーがいて、中間の卸業者がいて、さらに量販店、系列店などの小売り業者がいて、ようやくエンドユーザーがいる。この序列をないがしろにすることはこれまでの商習慣の破壊であり、そうした既存の仕組みの改革には、メーカーといえどもなかなか踏み込めていない。しかし、もうそんなことは言っていられない状況であることは、経営トップなら、十分に分かっているはずだ。

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メーカーが直接、通販会社を持つ時代

既存の商習慣の破壊なしで、仮にメーカーが直接、シニアユーザーなどの消費者ニーズを把握する有効な方法は何か?それは、例えばメーカーが直接、通販会社を持つことだ。そして、通販会社の運営自体はアウトソースでも構わないが、コールセンターなどの顧客接点のある部分は絶対にアウトソースしてはいけない。実際に顧客と接し、会話のやり取りなどが行われる業務領域は、自社の社員が直接行うべきである。ここが重要だ。

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