広告制作のクリエイターたちは、実際にどのような役割を果たしているのだろうか。『ブレーン』の表記ルールを元に、その「基本のき」をおさらい。
変化するクリエイターの役割を追う
2024年2月に電通が発表した「2023年日本の広告費」によると、日本の総広告費は1947年の推定開始以降過去最高の7兆3167億円となった。2020年から21年にかけコロナ下で落ち込みを見せたが、そこから持ち直し、23年は22年比103%という結果となっている。
その中で日々無数の広告キャンペーンがローンチされ、街中やテレビ、SNSで公開されていくが、一つひとつの企画の裏側には、数人~数十人の担い手たちがいる。課題を抱える広告主(クライアント)、クライアントに寄り添いあらゆる手段の打開策を考え課題の解決に導く広告会社、広告会社が示した方針の元で実際の映像やグラフィックなどの制作を担う制作会社。さらにその先の各方面のプロフェッショナルなど。それぞれのクリエイターは、実際にどのような役割を担っているのだろうか。
今回は特に、広告会社や制作会社のクリエイターにフォーカス。右記では、広告制作に携わるさまざまな役割の、基本的な仕事内容を解説。さらに企画づくりから納品まで テレビCMはどうつくられる?からは、各メンバーがどのような役割を担っているのか、実際の事例から紐解く。またAIが浸透する未来 CDとADの役割はどう変わる?からは、クリエイティブディレクター×アートディレクター、プロデューサー×プロダクションマネージャーといった仕事でタッグを組んでいる人々の対談を掲載。企業の課題が複雑化し、AIなど根本からクリエイターの役割を揺るがす存在が台頭した今。変化しつつあるそれぞれの役割が見えてきた。
広告制作に関わる主な役割
〇 CD(クリエイティブディレクター)
広告制作におけるクリエイティブの総責任者。クライアントとも話をしながら、目的に沿ったゴールに導く。
〇 企画(CMプランナー)
CMの企画を考えることに特化した役割。CDの補佐を担うことも。
〇 C(コピーライター)
広告の指針となる、コピーを考案する。
〇 AD(アートディレクター)
広告キャンペーンにおけるビジュアル全体の統括。
〇 CPr(クリエイティブプロデューサー)
広告会社に所属するプロデューサーで、クリエイティブや営業、制作会社などのハブの役目。
〇 Pr(プロデューサー)
広告会社から依頼を受けて制作を担う、制作会社側の総責任者。スケジュールや予算も管理。
〇 PM(プロダクションマネージャー)
制作進行を担当。演出や撮影、照明など、現場での制作部隊との連携を取り、Prと共にスケジュール・予算なども管理。
〇 演出
企画を元に、映像の構成や表現を考え、撮影現場で指揮を執る。撮影や照明、美術、キャスティング、ロケ地など、映像の全体をディレクション。
〇 撮影
演出の意向を元に、実際の撮影を行う。
〇 照明
照明技師。演出の意向に沿って、撮影と連携して、雰囲気や視覚効果を高める。
〇 美術
演出の設定や意向に沿って、広告の舞台となる空間をつくり上げる。美術デザインから大道具や小道具まで、対応範囲はさまざま。
〇 編集(オフライン)
別名、仮編集。現場で撮影した素材から映像の構成を組み、音声や音響効果なども反映。
〇 編集(オンライン)
別名、本編集。カラーグレーディング、MA・MIXなどを経たそれぞれの素材を元に、映像の最終仕上げを担う。
〇 カラリスト
オフライン編集後に、演出の意図に沿って映像の色味やトーンを調整。カラーグレーディングとも言う。
〇 CG
ADや演出の意図に沿って、CG制作を担当。
〇 音楽Pr(音楽プロデューサー)
一般的には演出から依頼を受け、時には作曲家や作詞家と連携し、映像に合った音楽の制作をリードする。
〇 SE(音響効果)
足音、街中の騒音など、映像のシーンや演出の意向に沿った音の効果をつくる。
〇 録音
撮影現場で、出演者の声などの録音を担当。ノイズの管理、編集や、撮影後のアフレコも行う。
〇 MA・MIX(マルチオーディオ・ミキサー)
音の仕上げを担う。BGMやSEなどボリュームのバランスやタイミングを調整していく。
〇 ST(スタイリスト)
演出の意図を元に、出演者の衣装のスタイリングを担当。
〇 HM(ヘアメイク)
演出の意図を元に、出演者のヘアセットやメイクを担当。
〇 ロケCRD(ロケコーディネイター)
撮影場所のディレクション。演出意図に沿った撮影場所を挙げ、下見も行う。撮影当日は現場の管理を担当。
〇 CAS(キャスティング)
芸能事務所などと連携し、演出意図に沿った広告の出演者をアサインする役割。必要であればオーディションも実施する。
〇 AE(アカウントエグゼクティブ)
広告会社でクライアントに対峙する営業の役割。近年ではよりプロデュース力や提案力も求められており「BP(ビジネスプロデューサー)」とも呼ばれる。
※ここでは主にテレビCMやWeb動画などの映像制作に携わるスタッフを記載。
※本誌取材をもとに作成。