シェアハウスはもはや当たり前、さらにリモートワークの普及や定額住み放題の賃貸サービスの登場により多拠点生活を選ぶ人が増えるなど、さまざまな“住まい方”の選択肢が生まれています。集まってくれたのは、環境省「第11回グッドライフアワード」で環境大臣賞 企業部門を受賞したWebサービス「さかさま不動産」や、愛知県名古屋市のシェアスペース「madanasaso」をはじめ実証実験的なプロジェクトを数々手がけるOn-Co代表の水谷岳史さん。明治大学で教壇に立つ傍ら、木造アパートの改修手法を集めた「モクチンレシピ」やインキュベーション施設「KOCA」の運営など、アカデミックと実践を繋ぐ活動を行う連勇太朗さん。2005年、大学在学中に住民交流型の賃貸住宅「ソーシャルアパートメント」を発案、現在約50棟を運営するほか、ライフスタイルホテルの開発・運営なども手がけるグローバルエージェンツ 代表の山﨑剛さん。ライフスタイルや価値観が多様化する中で求められる住まいと、暮らし方のネクストを考えます。
居心地のいい場所を自由に選べる時代
山﨑:2005年にグローバルエージェンツという会社を創業して、もう20年近く「ソーシャルアパートメント」事業を続けてきました。普通のマンションに、24時間いつでも自由に使えるラウンジなどのコミュニティスペースが付いた物件で、首都圏を中心に約50棟3000室を運営しています。
水谷:僕たちは、2011年ぐらいから空き家を借りてシェアハウスやレンタルスペース、飲食店などを運営してきました。そのとき感じたのは、空き家はあるけれど流通している物件がすごく少ないということ。だったら、借りたい人の情報を出して大家さんに選んでもらったらいいんじゃないかという仮説が生まれて、「さかさま不動産」というサービスに繋がっていきました。
連:建築家として、CHArというNPO法人の代表をしています。木造アパートの改修手法を公開した「モクチンレシピ」というサービスや、そこから派生した地域の不動産会社向けのコンサルティングのほか、@カマタという会社では、京急線の高架下で「KOCA」というインキュベーションスペースの運営もしています。大学で建築を教えているので、アカデミックと実践を繋ぐというのもテーマのひとつですね。
水谷:ほかにも名古屋駅から徒歩15分のところで「madanasaso」というクリエイターのための拠点を運営したり、素材の開発をしたり。On-Coという会社で、「まだなさそう」なものをどうやって生み出していくかを、みんなで試しています。
連:最近、空き家や遊休不動産を活用して住まいのセーフティネットをつくる「GOOD GOOD NEIGHBORS」というプラットフォームをリリースしたんです。さかさま不動産の仕組みも面白いと思って見ていたので、今日はお話できて嬉しいです。
水谷:ありがとうございます。家賃が高くて困っている人がいる一方で、家が余っているというのは矛盾だらけだと感じているので、新しい切り口のサービスがどんどん生まれるのはいいですよね。
山﨑:僕が起業したきっかけは、既存の単身者向けのアパートやマンションが一律で何も面白くないと感じたこと。家って人生の半分近くを過ごす場所なのに、生活する機能だけにとどまっているのはもったいない。起業したのはちょうどFacebookやmixiといったSNSが立ち上がった時期で、“ソーシャルネットワーキングサービスのリアル版”がつくれないかと考えたんです。
連:20年の間に変化はありましたか?
山﨑:創業当時、すでに海外ではシェアして暮らすのが当たり前で、最初の頃の入居者さんは、海外経験がある人がほとんど。そのうち日本でも「シェアハウス」という言葉が一般的になって、今では初めて一人暮らしをする人や、コミュニケーション力を上げたいなんていう人も多いですね。僕たちはソーシャルアパートメントを文化にしていきたいと考えているので、今の状況をポジティブに捉えています。
連:共用部分がリッチだし、コミュニティとしての価値もある。となると、家賃は普通のシェアハウスよりも高いんですか?
山﨑:シェアって基本的には割り算の考え方ですが、僕らはあまり「シェア」とは言っていなくて、あくまで自分の部屋にプラスアルファで、ラウンジやコミュニティがあるという考え方です。
連:コミュニティって目に見えないので、その価値を家賃に...