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青山デザイン会議

ファスト消費の現在 ロングライフデザインを生み出すことは可能か

相馬夕輝 今井裕平 小藥 元

消費サイクルがどんどん早まり、ヒット商品が生まれにくくなったともいわれる現在。クリエイターは今後、“長く愛される”商品やブランドをどのように生み出していけばいいのでしょうか。集まってくれたのは、D&DEPARTMENT ディレクターとしてロングライフデザインの啓蒙活動に携わり、現在は食の分野に従事。今年1月には、初めての著書『つづくをたべる食堂』を出版した相馬夕輝さん。会社の看板商品・サービスをつくり出す「フラッグシップデザイン」を提唱し、メモ代わりに使えるリストバンド「wemo」をはじめヒット商品を多数手がける、kenma 代表の今井裕平さん。FIBA バスケットボール ワールドカップ 2023 テレビ朝日、TOYOTA ランドクルーザーなどのコピー開発を中心に、企業のブランドコンセプトやCI策定に数多く関わり、『なまえデザイン』の著者としても知られる小藥元さん。議論は「そもそもロングライフデザインとは何か?」という問いからスタート。立場の異なる3人が、デザインのこれからを考えます。

デザインという言葉自体を再定義する

相馬:D&DEPARTMENTは、およそ20年ほど「ロングライフデザイン」をキーワードに、長く続いていく、使い続けていくものの良さを考える活動を続けてきました。僕自身、最初の10年はショップに関わり、この10年はそこから食のロングライフデザインを考えることにシフトしています。

今井:成果を完成物ではなく数字で語るデザイン会社をやりたいと考えて、kenmaという会社を立ち上げました。肩書はビジネスデザイナーで、何かものをつくるだけではなくて、どうやって事業を立ち上げていくかというのが主な業務範囲です。

小藥:僕は新卒で博報堂に入社して、10年目で独立して、さらに10年ほど経ちました。肩書はコピーライター、クリエイティブディレクターで、独立当初も今もですが、世の中からはポスターに1行コピーを書く人みたいに誤解されています(笑)。どうしても最後の表現ばかりに目がいきがちですが、企業や経営者には今、整理する力や定義する力が求められていると感じます。

今井:うちの会社のコンセプトは「フラッグシップ(看板商品)をつくる」なんですね。せっかく新規事業を立ち上げるなら、自社が誇れる看板商品やサービスをつくった方が会社も成長するし、社員のモチベーションも上がる。最初は、なぜ今日ここに呼ばれたのかわからなかったのですが、フラッグシップをつくるということは、ロングライフじゃないとあかんやん、ってことに気付かされて。ロングライフデザインについては、相馬さんが専門だと思うのですが、そもそもなぜそれをテーマに活動を?

相馬:ひとつは創業者のナガオカケンメイがグラフィックデザインや広告の業界にいて、自分がつくったものが短い期間で消費されていく現状を目の当たりにしていたことがあります。

小藥:僕も広告代理店にいたのでよくわかりますが、広告はスクラップ&ビルドを繰り返すことで延命するのが宿命のようなところがありますよね。

相馬:ちょうど二十数年前って、「◯◯デザイン」のような言葉が登場して、それがまた消費を巻き起こすワードとして使われ始めた時代だったんですね。そういう違和感の中で、デザインという言葉自体を再定義しなくちゃいけないんじゃないかと考えて、たどり着いたのが「ロングライフデザイン」という言葉だったんです。

今井:「消費」という言葉を聞いて腑に落ちました。むちゃくちゃ勉強になります。

相馬:同時に、リサイクルショップ巡りが好きだったナガオカが気付いたのは、別の場所では何万円で売れていたものが、見る人や買うシーンによってはタダ同然になってしまうこと。ロングライフデザインというキーワードは、そういう実体験の中から浮かんできた気がします。つい先日も、もっと世の中に浸透していかないとダメだよね、っていう話をしたところで。

小藥:考えてみると、僕たちの周りには、素晴らしいロングライフデザインがたくさんありますよね。たとえば、冬こたつに入るとか、花見をするとか、法隆寺や富士山だってそう。静岡在住で、家から毎日富士山を見るのですが、なぜ昔も今も人の心を惹きつけるのか。すごいですよね。

相馬:本当にそうですよね。僕らもプロダクトから派生して、『d design travel』という観光ガイドブックをつくって、伝統工芸や産業も含めた文化みたいなところに範囲を広げています。

小藥:パーソナルなものでも、たとえば父親から受け継いだ時計は、他者から見たらガラクタかもしれないけれど、その人にとってはロングライフデザインといえる。それぞれが、そういうものを大切にする文化っていうのは素敵だなと。

今井:デザインって聞くと、ものの形とか行為だと思われがちですが、もはや精神的なものなんですかね。

小藥:消費を促し続ける経済活動とは真逆のところにあったりしますものね...

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