観戦する場だけにとどまらず、今やエンターテインメントやまちづくりの拠点としても注目を集めているスタジアムやアリーナ。スポーツビジネスの拡大に伴い、全国各地で新設が相次いでいます。集まってくれたのは、LEDビジョンをはじめ大型映像や音響のサービス事業を展開し、さまざまなスポーツイベントの演出・サポートを行う、ヒビノの岩﨑俊也さん。2023年3月、北海道北広島市に開業した新球場「エスコンフィールドHOKKAIDO」と、周辺エリアを含めた「北海道ボールパークFビレッジ」の運営を手がける、ファイターズスポーツ&エンターテイメントの酒井恭佑さん。Bリーグ2022-23シーズン初優勝を果たした琉球ゴールデンキングスのゼネラルマネージャーで、2021年3月に竣工した日本初の本格的バスケアリーナ、沖縄アリーナ社長も務める安永淳一さん。新たな体験を生み出す仕掛けや演出、ファンづくりの方法、地域とのつながりまで。エンタメ化し、さらに“まち化”する、未来のスタジアムやアリーナを語りました。
「質より量」から「量より質」へ
安永:1990年にアメリカに渡り、95年から2007年まで、NBAのニュージャージー・ネッツ(当時)のフロントとして働いてきました。2007年からBリーグの琉球ゴールデンキングスの立ち上げに参加し、現在はゼネラルマネージャーを務めています。
酒井:私は東京ミッドタウンでイベントプロデュースや販促の仕事に従事したあと、地元の北海道に戻ってファイターズスポーツ&エンターテイメントに転職し、ボールパークプロジェクトにジョインしました。開発時は内装のディレクションやサイン計画、2023年3月の開業後はイベント企画やコミュニティ創出を担当しています。
岩﨑:私たちヒビノは、皆さんとは少し違って、コンサートやスポーツなどのイベント会場に、映像や音響機器をレンタルしてオペレーションをする事業を行っています。機器を販売する事業も行っているので、もしかしたら皆さんの施設でもお使いいただいているかもしれません。
安永:私がアメリカに渡った当時は、日本にはアリーナという名前が付いた建物すらなくて、体育館はどこも金太郎飴のように同じ。どれだけ多くの人を収容できるかという「質より量」を追っている施設が多かったんです。一方、NBAはというと座席数を減らして、代わりにラグジュアリースイートやプレミアシートをつくって付加価値を高めようという方向に進んでいました。
岩﨑:お2人が関わるエスコンフィールドや沖縄アリーナに代表されるように、最近、日本全国でスタジアムやアリーナが新設されています。スポーツ業界が盛り上がるという意味でも、すごくいい傾向だなと。
安永:野球の場合は「ボールパーク」という言葉が一般的になりましたし、エスコンフィールドはまさにその集大成というか。
酒井:エスコンフィールドは、札幌と新千歳空港の間の北広島市に位置していて、敷地面積は約32ヘクタール。そのエリア全体を「北海道ボールパークFビレッジ」、核となるファイターズの新球場を「エスコンフィールドHOKKAIDO」と呼んでいます。日本初の開閉式屋根付き天然芝球場で、一部を除いて365日オープンしているというのは世界的に見ても珍しいかもしれません。
岩﨑:一大レジャー施設というか、街ごとつくるようなイメージですよね。
酒井:はい。球場の中にはホテルや温泉&サウナがあったり、クラフトビールを醸造していたり。球場の外にも商業施設があり、夏にはアクティブシニア向けのレジデンスやメディカルモールも開業予定です。
安永:まさにNBAも同じで、それぞれのアリーナが全て違うし、自分たちの"色"を出そう出そうとしていました。たとえばビジョンひとつをとっても、大きさや形状を競い合っていて、機能性はもちろん、収益性やエンターテインメント性といった「量より質」を求めようとしていたんです。
岩﨑:ここ10年ぐらいの変化といえば、LEDライトやLEDディスプレイの進化も大きいですよね。演出を考えると暗転するのはマストなのですが、昔の体育館は水銀灯なので、一度電気を消してしまうと、すぐに明るくすることができなくて。
安永:本当にアメリカかぶれで恐縮なのですが……NBAでは、LEDの照度だけでなく色温度も調整していますよね。演出についてもそれぞれの分野のエキスパートがいて、日々進化している。
酒井:ちなみにエスコンフィールドの場合、ライト側とレフト側に、それぞれ幅86メートル、高さ16メートルもある世界最大級のLEDビジョンを備えていて、音響にもこだわっています。
岩﨑:ビジョンについてもかなり進化していて...