水戸ホーリーホック「クラブ創立30周年事業」
クラブ創立から30周年を迎えたJ2所属のプロサッカーチーム「水戸ホーリーホック」は2023年末から、クラブの認知向上などを目的にさまざまな周年記念事業を実施している。ホームタウン目線で幅広く広告を展開した。
全ての人を巻き込むよう多面的に展開
水戸ホーリーホックは1994年にFC水戸として創立。合併を経て、1997年に現在の名称になった。2000年にJリーグに加盟して以降、J2の舞台で戦い続けている。茨城県北15市町村がホームタウンで、選手がそれぞれの観光大使を務めるなど地域に根付いた活動にも力を入れる。
一方、前田大然、小川航基ら海外クラブで活躍する選手を輩出してきたが、チームのブランドイメージが定着していないことが課題だった。そこで「今までにないクリエイティブを通じて周知を広めたい」という考えで、クリエイティブ、サービスデザイン事業を手がけるタングルに依頼。クリエイティブディレクターを務めたタングルの南雲武彦さんは「既存ファンの定着はもちろん、ライト層の掘り起こしもテーマでした。チームと地域に関わる全ての人を巻き込むつもりで多面的に展開しています」と話す。
地域にまつわるコピー、デザインを制作
記念事業は2023年12月末から通年で実施する。開幕戦に合わせて2月からはJR水戸駅や茨城空港、映画館など水戸周辺の施設に広告を展開した。このほか記念ロゴやオリジナルフォントの制作、特設サイトや記念ムービーの公開、周年記念グッズの発売、地元紙への出稿などさまざまなコミュニケーションを実施している。
周年事業のコンセプトメッセージは「熱狂は、ここから始まる。」、メインコピーを「未来に立ち向かえ。」とした。コピーライターの片田早紀さんは「30周年を前に水戸ホーリーホックが職員に実施したアンケートで、『30周年はゴールではない』という回答がありました。今までも頑張ってきたが、あくまでこの節目は通過点。その先を目指そうというプロサッカーチームとしての想いがありました。未来に向けた志をメインコピーで表現し、過去をひっくるめて超えていく勢いを『熱狂』という言葉に込めました」と話す。
掲出したポスターは18種。全て撮り下ろしでスタジアムの写真3枚のほか、ホームタウン15市町村の名所や景観のいい場所を撮影した。「役場や地元の方に名所を聞いて情報収集しました。メインビジュアルは夜明けのスタジアムですが、これは長くJ2で戦い続けていたチームが未来へ挑戦していく姿を表現しています」(アートディレクター 藤井賢吾さん)。
撮影地に合わせてコピーも変えている。日本トップクラスの高さを誇るバンジージャンプスポットの竜神大吊橋には「熱狂に、飛び込め。」、阿字ヶ浦海岸にはチームカラーと合わせて「やっぱり、青がすき。」など。「現地に足を運んで感じた地域の魅力を盛り込み、スポットの説明とチームの熱意のどちらにも解釈できるコピーにしました。地元密着のチームらしい広告になっています」(南雲さん)。
記念ロゴは「30」の数字にチームの特徴である龍のデザインをあしらい、ファンとともに苦楽を乗り越え歩んできた30年を表現した。オリジナルフォントは英字と数字を制作し、ロゴとともにさまざまな場面で活用できるようシンプルに仕上げた。
ディレクターの山田誠一朗さんは「一連の展開を通し、水戸近辺をホーリーホックで埋めるなど期待感を醸成できていると思います。引き続き盛り上げていきたいです」と意気込む。今後も記念ユニフォームのデザイン、SNSキャンペーンなどで盛り上げていく予定だ。
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