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デザインプロジェクトの現在

木で居心地を追求する「KIGOCOCHI」

鈴野浩一(トラフ建築設計事務所)

鈴野浩一さんと禿真哉さんによるユニット、トラフ建築設計事務所から、「KIGOCOCHI(キゴコチ)」というプロジェクトを手がけたと知らせが届いた。木をふんだんに使ったデザインが、心地良さそうな空間をつくっている。どんなプロジェクトなのか、全体のデザイン監修を担った鈴野さんの話を聞きに行った。

木で居心地をつくっていく

「KIGOCOCHI(キゴコチ)」は、三菱地所ホームが興した、「木と寄り添う暮らし」を提案するマンションのリフォームプラン。開発背景にはある問題意識があったという。新しくつくられる建物においては、木を積極的に取り入れる「木造木質化」は進んでいるものの、既存のマンションをリフォームする際は、躯体の構造や間取りの制限などの理由から「木造木質化」を進めるのが難しい。この課題を解決できないかと、プロジェクトがスタートした。「木が空間の居心地をつくっていきます。そこを強い考え方で示すデザインについて、さまざまな角度から検討を重ねました」(鈴野さん)。躯体や間取りによる制限を配慮しながら“木で居心地をつくる”ことを柱に据え、進めていった。

確かに木の存在は、人の心地良さにつながっている。木の下に佇んだり、木に寄り添ったりした時、人は心がしんと落ち着き、くつろぎが心身に広がっていく。その感覚を味わえる空間は、魅力的な存在に違いない――行き着いたのは、「コア」と名付けた3パターンの木の塊をつくり、それを部屋の中に配すること。壁で仕切られた部屋で空間を構成するのではなく、塊で部分的に仕切りながら、全体として大きくつながっていく開放感のある場をデザインした。

主要材として用いたのは国産ヒノキ。明るく美しい木肌を持っている上に、耐久性に優れ、湿度に強い。内装に使う際の廃棄ロスが課題になっていたが、「キゴコチ」では、構造用部材として使われるヒノキ合板をベースに、隠れた層には節の多い部分を、表面には色や木目の美しい部分を配することで、廃棄ロスを大幅に減らしたという。

トラフ建築設計事務所がデザイン監修をした、三菱地所ホームのマンションリフォームプラン「KIGOCOCHI(キゴコチ)」。横浜にある70平米の既存マンションモデルルームで、リフォームプランを実現した様子。(撮影:見学友宙)

「キゴコチ」を実現する3つのコア

キゴコチ」の3つの「コア」とはどのようなものなのか――1つ目、「水回りのコア」は、ユニットバスと脱衣所などが集まっているパート。脱衣所の床…

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