クリエイターのオフィスを訪ねると、よく見かける、大きな本棚。忙しい仕事の合間に、クリエイターたちはどんな本を読んで、どのように仕事に活かしているのか。今回は野菜が主役の和食店「七草」店主の前沢リカさんです。仕事や人生に影響を受けた本について聞きました。
『料理歳時記』
辰巳浜子(著)(中公文庫)
新卒入社で会社員になった私を、その数年後に料理の世界へと導くことになった一冊です。幼少期から料理が好きで、つくること専門だった私に、「料理を読む」ことの楽しさを教えてくれたのは、読書家の会社の同期でした。
以来、小説、エッセイ、指南書とさまざまな料理本に夢中になりました。ちょうどその頃、「飲食店を始める女性がいる、会ってみないか?」と知人から声がかかりました。「きっと気が合うはず」という知人の見立て通り、私たちは料理本の話で終始盛り上がり、「とてもいい本がある。まだ読んでいないなら是非」と彼女から渡されたのがこの本でした。
食材の手当や料理のコツ、食の歳時記を小気味よく語るこの本は、私の料理に対する視界を拡大させ、深め、何度も繰り返し読みました。「柿の葉が柿の葉寿司にちょうどいい大きさになった」「柚子の花が赤ちゃんのような実をつけた」など...