クリエイターのオフィスを訪ねると、よく見かける、大きな本棚。忙しい仕事の合間に、クリエイターたちはどんな本を読んで、どのように仕事に活かしているのか。今回は、SNSで話題となった『セーラー服の記憶』や文字の上で24時間生活をしたドキュメンタリー漫画『も』など、その創作活動に注目が集まる漫画家の三浦よし木さんです。仕事や人生に影響を受けた本について聞きました。
『おぢいさんのランプ』
新美南吉(著)
(ほるぷ出版)
この本は新美南吉が29歳で亡くなる前年に出した唯一の童話集です。
私は漫画家を目指して26歳の時に上京し、思うように何も進まず苦しい時に古本屋でこの本を見つけました。そして偶然にも新美南吉と同じ愛知県の半田市出身で、東京でも南吉が過ごしたのと同じ街に住んでいました。そのため勝手に自分と南吉を重ね、この本との出会いを特別に感じていました。
誰もが隠しておきたい感情を南吉はダイレクトに、さりげなく描きます。私も何かを描きたいと思う原動力として、漠然とそうした感情への興味があります。それを私が生まれるずっと前に形にしていた南吉に圧倒されたのと、それらのテーマは普遍的なのだという勇気をこの本からもらいました。それから南吉の他の長編作品なども読むようになりました。
2021年には愛知県主催のオンライン・アートプロジェクト「AICHI⇆ONLINE」で新美南吉の『花を埋める』を漫画に...