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日本チャップリン協会会長 大野裕之さんがおすすめする4冊の本

大野裕之

クリエイターのオフィスを訪ねると、よく見かける、大きな本棚。忙しい仕事の合間に、クリエイターたちはどんな本を読んで、どのように仕事に活かしているのか。今回は、日本チャップリン協会会長を務める脚本家の大野裕之さんです。仕事や人生に影響を受けた本について聞きました。

『チャップリン自伝 若き日々』

チャールズ・チャップリン(著)、中里京子(訳)
(新潮文庫)

小学校5年生の時に初めて『独裁者』を見て衝撃を受けた。現実を映すドキュメンタリーではなく、新しい現実を生み出すフィクションの力。お小遣いで本書を買って夢中で読んだ。

極貧の幼少期、チャップリンの父は酒で命を落とし母は精神に異常をきたす。それでも幼いチャーリーは舞台で頭角を現し、やがて世界を笑いと涙の渦に巻き込む大スターになっていく……。大阪の貧乏家庭に生まれた僕は、本書から生き抜く力、逆境でもユーモアを忘れないこと、要するに人生に必要な全てを学んだ。

19世紀末から20世紀の主な戦争を経験した彼の回想は、そのまま生きた歴史書にもなるし、時代を代表する芸術・科学・政財界の偉人との交友録は、各ジャンルへの好奇心をかき立ててくれる。本書の最後で喜劇王は、ショーペンハウアーの言葉を引きながら妻への愛を語るのだが、その一節は僕が哲学書を読み始めるきっかけになった。

本書のおかげで映画への窓が開かれ、チャップリンとビートルズを通して英国への興味が湧き、のちにロンドンでチャップリンの研究をし、そこで本場のミュージカルと出会うことになる。現在の活動へのきっかけをつくってくれた一冊だ。なにより、無類の面白さで読むもの全てを興奮させる。

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