クリエイターのオフィスを訪ねると、よく見かける、大きな本棚。忙しい仕事の合間に、クリエイターたちはどんな本を読んで、どのように仕事に活かしているのか。今回はアーティストであり、ファッションデザイナーとしても活躍する雪下まゆさんです。仕事や人生に影響を受けた本について聞きました。
『発達障害の僕が「食える人」に変わったすごい仕事術』
借金玉(著)
(KADOKAWA)
ADHD(注意欠如・多動症)の診断を受けている私が友人から勧められた一冊。幼少期から世間とズレていることを自覚しつつ、それが作品制作に役立ったり、苦しみの種になったりする自分にとって、発達障害は大きな人生のテーマとなっているのでこの本を選んだ(発達障害は人により差異があるので、この本が全ての人に適応するとは限りません)。
本書ではADHDの著者が過去の失敗経験を交えて行動分析・実践し、私たちに悩みの解決方法を教えてくれる。たとえば、「努力」や「気合」で物事を乗り越えることができない。だから自分は怠けているに違いない、やらねば、でもできない、という無力感。そして、無理を続けて倒れてしまう……そんな事態を避けるために服薬の有無・睡眠時間・仕事の成果を記録し「定点観測」をすることで自分の状態がわかる。
他にも、「見えないものは存在しない」「苦手な雑談の必要性」「共感性について」など、発達障害かどうかはわからないが社会で生きづらさを感じる瞬間がある人にも面白い本になっていると思う。
この先も厄介な発達障害というものと付き合い続けていくわけだが、こういった先人、いや、同胞の存在は生きていく上で非常に心強い。