クリエイターのオフィスを訪ねると、よく見かける、大きな本棚。忙しい仕事の合間に、クリエイターたちはどんな本を読んで、どのように仕事に活かしているのか。今回は、数学者としての視点を活かし、イラストレーターとしても活動する新庄玲子さんです。仕事や人生に影響を受けた本について聞きました。
『おばけのバーバパパ』
アネット・チゾン、タラス・テイラー(著)、山下明生(訳)
(偕成社)
幼い頃は姉と二人、近くの小さな図書室によく連れて行ってもらいました。バーバパパに出会ったのはそれが最初です。飛行機、馬車、動物などさまざまな物に形を変えるファミリーと色鮮やかに描かれる彼らの世界にすぐ虜になりました。一度読んだかどうかは関係なく、バーバパパを見かけたら借りてくる。そんなことを繰り返していましたが、いつの間にかストーリーは忘れ、私の中では「好きなかわいいキャラクター」になっていました。
それから数十年……、バーバパパがどこでどのようにして生まれたのかを知ったのは、娘と一緒に訪れた図書館で手に取ったこの本でした。こんな話だったのかと懐かしく思い、他の話も借りてみました。改めて読んでみると、幼い頃は気にしていなかった、背景に描かれる動植物や建造物の細かい造形に驚きました。
でも、それは作者の能力が遺憾なく発揮されているだけのこと。作者のアネット・チゾンさんは建築設計士で、タラス・テイラーさんは生物学と数学の教師だったそうです。こんなにステキな世界はつくれなくても、数学者であるからこそできる...