クリエイターのオフィスを訪ねると、よく見かける、大きな本棚。忙しい仕事の合間に、クリエイターたちはどんな本を読んで、どのように仕事に活かしているのか。今回はスープ作家の有賀薫さんです。仕事や人生に影響を受けた本について聞きました。
『料理の四面体』
玉村豊男(著)
(文春文庫)
10年間も、どうやってつぎつぎ新しいスープを思いつくのですか?そう聞かれたとき、私は「スープの方程式」の話をしています。スープを、具材、出汁、調味料、油など、要素ごとに分解することによって無限にレシピが生み出せます。料理を構造的に捉えるクセは、20歳の頃に読んだ本書の影響によるもの。火・水・油・空気、4つのエレメンツで世界のあらゆる料理が説明できるという内容に衝撃を受けました。料理を連続性のあるひとつのものと捉えることによって、シンプルで汎用性の高いものにできるということが、いまの私の料理観にもつながっています。
また、この方法論が、著者のフィールドワークでの体験、あるいはその手で実際につくった料理から生まれてきたということに大きな尊敬を覚え、何かをつくる上ではこうありたいという、ものづくりの指針にもなっています。ちなみに、私の手持ちの文庫版の奥付には1983年発行とありました。古びることなく、今なお多くの人に読まれ継がれる名著です。