本質と軽やかさ
私には、コピーライターの師匠が2人いる。入社するまでキャッチコピーという言葉すら知らなかった私は、思いもかけずクリエーティブ局に配属され、さらに鶴保正明さんという、天才かつ厳格なコピーライターについてしまった。
Apple/1997年
〇C/Craig Tanimoto
東海旅客鉄道/1994年
〇C/太田恵美
KDDI/2001年
〇C/秋山晶
「クレージーな人たちがいる」そんな言葉がテレビから流れてきた日のことを忘れない。当時、私は35万円くらいしたマッキントッシュを35カ月ローンで買っていた。世の中はウィンドウズの全盛時代で、アップルは低迷しており、友人に「なんでマック?」と笑われたのを覚えている。その友人は大企業に勤めていて、一方私は留年した上、リクルートスーツが嫌いで就職活動もろくにせず、卒業後、やっと小さな制作会社でコピーライターになったばかりだった。
その友人は私の仕事内容を聞いて「要するに下請けだよね?」とも言った。学生時代からの遠慮ない仲だ。悪気はなかったと思う。でもモヤッとした。おかげで、マックを買ったことと、いわゆる大企業に入らなかったことが、私の中で結びついてしまった。マイナーな世界を生きている自分。だから...