みんなに、愛されてる?
この業界に入ってから好きになったコピーはたくさんあるけれど、それらはコピーライターとして「学ぶ」という意識もあって好きになったもので、もちろんそれは悪いことではないのだが、職業意識を持って感銘を受けたコピーを「名作」として選ぼうと思った時に、ふと10代の僕が疑わしそうな目でじっと40代の僕を見ているのに気付く。
伊勢丹/1972年
〇C/土屋耕一
丸大食品/1970年
〇C/新井清久
西武百貨店/1982年
〇C/糸井重里
広告に「感動」がなくなった。「泣ける」「しみた」ってことではない。広告が本来持っていたダイナミズムともいうべき「感動」である。
「こんにちは土曜日くん。」は1972年の伊勢丹のコピー、土屋耕一さんの作。名作の殿堂に納められているが、2021年の常識で考えると実は不可解なコピーである。「週休2日に臨んだマーケット拡大」という伊勢丹の思惑までは読み取れるが、ここでテーマとなっている「週休2日」は「月に1日の土曜日が休み」も含めてのもの。それも労働者全体の35.9%に過ぎず、「完全週休2日」に至っては5.8%。つまり2021年の常識からすると時期尚早、下手すると「クレーム来ちゃいますよ」となる。
しかしこの広告に「オレらは土曜日も仕事だよ」なんて...