みんなに、愛されてる?
この業界に入ってから好きになったコピーはたくさんあるけれど、それらはコピーライターとして「学ぶ」という意識もあって好きになったもので、もちろんそれは悪いことではないのだが、職業意識を持って感銘を受けたコピーを「名作」として選ぼうと思った時に、ふと10代の僕が疑わしそうな目でじっと40代の僕を見ているのに気付く。
TOTO/1991年
〇C/小川英紀
BIG JOHN/1981年
〇C/仲畑貴志
TOTO/1992年
〇C/仲畑貴志
言葉の組み立て、コピーとビジュアルとの距離感など、ありとあらゆる表現手法を『仲畑広告大仕事』(講談社)という、サイズも中身もごっつい一冊から学んだ。今でもこの本を開くと若手と呼ばれていた頃の楽しさや不甲斐なさが蘇ってくる。名作揃いの中からチョイスするのは至難の業だが、教科書として今も大切にしているこの本から選んでみたい。
「便器は、じっとしていない。」。時代の先頭を走る企業または商品であることを伝えたいときに「先進」や「進化」といった言葉を使わず、その企業ならではの言葉でいかに伝えるかを考える。その時に必ず脳内をウロチョロするのがこのコピーだ。「さぁ、コピーライターとしての、腕の見せどころだぞ」と今も発破をかけてくれる、ぼくにとっては有難いコピーなのである。
「見知らぬ男に出会っても、過去を尋ねてはならない。」。