3Dプリンティングをはじめ、デジタルデータをもとにした創作技術「デジタルファブリケーション」。これらは広告・デザイン領域の可能性をいかに広げていくのか。TOKYO2020の表彰台プロジェクトなどを手がけた、平本知樹さんが解説する。
伝統技術に3Dプリンタを取り入れる
ある建築の施工部隊の工房で「ここはノミやカンナで建築部材を切り出しひとつずつ丁寧につくっています」という話を聞き感心しました。しかしそこでも、電動鋸(のこぎり)などの電動工具は使われています。
良し悪しではなく、何を大切にしているかという文脈で語る必要があると同時に、当たり前の基準がアップグレードされていくことも感じました。1920年頃に電動丸鋸が発明されてから100年近く経って、トラディショナルな道具へと昇華していきました。それを鑑みると1980年に3Dプリンタが発明されてから、まだ40年ほどなので、広く普及するには時間がかかるかもしれません。
実際の加工現場からすると3Dプリンタ(デジタルファブリケーション)は新参者ともいえるので、取り入れられていない分野は数多く存在します。中でも、伝統工芸といわれるジャンルはその最たる例かもしれません。たとえば漆塗りは...