IDEA AND CREATIVITY
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青山デザイン会議

日本で表現するクリエイターたち

アユミ・タカハシ、キリーロバ・ナージャ、マイク・エーブルソン

東京オリンピック・パラリンピックが開会し、海外から日本への注目が高まっています。今回の青山デザイン会議のテーマは、海外にルーツを持ち、日本で活動するクリエイター。

ニューヨーク、東京、ベルリンと拠点を変えながらアーティストとして活動し、グーグル、アップルほか多くのクライアントワークも手がけるアユミ・タカハシさん。ソ連のレニングラード(当時)で生まれ、6カ国の教育を受け、現在は電通でクリエーティブディレクターを務めるほか、絵本作家としても活動するキリーロバ・ナージャさん。ニューヨークで「ポスタルコ」を設立後、東京に拠点を移し、ステーショナリーをはじめ、日本の手仕事の技術を活かした数々のプロダクトをデザインするマイク・エーブルソンさん。

3人はなぜ、日本で表現することを選んだのか。日本でクリエイティビティを発揮する意味や楽しさ、その可能性について聞きました。

Text:rewrite_W

そもそも、皆さん何しに日本へ?

マイク:「ポスタルコ」というブランドをやっています。僕がプロダクトデザイナー、妻の友理がアートディレクター、ステーショナリーから始まって、今は家具から鞄、服まで。人間のまわりにはいろいろなモノが必要で、体と世界の間の“層”をつくっているというか、人間を完成させるという考え方でものづくりをしています。

アユミ:メインの仕事はイラストレーターで、アートの展示をしたり、ブランドとコラボしてイラスト、パッケージやプロダクトをつくったり。その他にも、アメリカではお茶のブランド「Three Gems Tea」、中国ではアートギャラリー「Box Museum」も立ち上げました。

ナージャ:私はこの中では唯一、大企業に勤めています。入社したら、なんと日本語のコピーライターとして配属されまして、名作コピーを写経して学ぶことから始まって、そのあとデジタルの分野にも関わって。今は、広告業以外に個人的活動を行う「B面」を持った社員が集まる「電通Bチーム」に所属しています。

マイク:ポスタルコは、20年ほど前にニューヨークのブルックリンでスタートして、日本のものづくりに可能性を感じて東京に移りました。ファッション業界のように、ワンシーズンごとに新しい商品を出すのではなく、長く使い続けてもらえるものをつくりたいと思って。

アユミ:私は生まれが中国の大連で、日本で中学・高校に通って、その後はアメリカの大学でイラストを専攻して、ニューヨークに拠点を置いて仕事をしていました。去年は1年間ドイツにいたし、タイやイギリスに留学していたこともあって、世界中を回りながら、活動している感じですね。

ナージャ:私は、当時まだソ連だったレニングラード(現サンクトペテルプルグ)で生まれて、親の仕事についていく形で、6カ国を転々と。毎年違う国の学校に通って小学校は3回も卒業したし、言語も文化も違う中で楽しくサバイブしてきました。日本に来てからはもう20年で、東京、名古屋、京都、札幌……全国いろいろな場所に住んでいて、もう何人かわからない感じになっています(笑)。

アユミ:日本に拠点を移そうと思ったのは3年前。アメリカに13年住んで、やっとグリーンカードが取れた瞬間、自由になれた気がして。ちょうど当時、仕事で京都に行く機会があって、こんなに美しい伝統工芸の技が残っているのにデザインのアップデートはまだまだで、余地がたくさんあると感じました。そこで妙な使命感が生まれて、すぐ日本に帰ることを決めたんです。

ナージャ:日本には私がこれまで暮らした他の国とは全く違う「普通」があって、自分の経験が活かせるのは日本なんじゃないかなということに気付いたんです。ハプニングや予想外のことがよく起こる、その面白さにつられて。若手の頃、初めてクライアントのところに行くときも、まさか先方は、私が日本語のコピーを提案してくるとは思っていなかっただろうし。

マイク:予想外って、たとえばどういう?

ナージャ:仕事でマイルドヤンキーについて調べたことがあって、郊外の国道沿いのコンビニで雑誌を読むふりをしてリサーチしたんです。その結果を社内で「キティちゃんのスリッパを履いている」とか「紫色の服を着てる」とか自信満々に報告するのですが、「当たり前じゃん」と言われて。でも負けず嫌いだから、さらに調査を続けると、思いもよらない情報がたくさん発見されて、いつもとは違う広告ができたり。

マイク:なるほど、面白い(笑)。

ナージャ:私は日本の「普通」を知らないから視点がズレて、自然にアイデアや発想が広がっていくことがあるんです。

    AYUMI TAKAHASHI'S WORKS

    Box Museum
    2019年、中国・大連にオープンしたコンセプトギャラリー。世界で活躍するアーティストとコラボし、配送ボックスの形をしたスペースの中でインタラクティブな展示を行っている。

    Three Gems Tea
    おいしいオーガニックのお茶を、もっと楽しくカジュアルに。お茶のイメージを変えることを目指して、自身がアメリカで立ち上げたブランド。

    Photo:Josh Shaedel

    コカ・コーラ

    きものやまと

    スターバックスコーヒー

    『THE SHANGHAIREN』

    FISK Gallery

    Personal Painting
    左から「I will sit in front of you」「The Flower Between You and Me」「Tomorrow」。

    『KNOW YOUR STYLE』(Hardie Grant Publishing)

    CASETiFY X A-GENT TOKYO

    ロクシタン 2020 グローバルキャンペーン

日本は世界で一番、老舗が多い

アユミ:私にとって日本は、うまい具合に東洋と西洋の文化が混ざった、すごくいい感覚の場所なんです。

マイク:ものづくりの話をすると、海外だと、最初からドーンとたくさんの量をつくらないといけなくて、値段は安くなるかもしれないけれど、完成されていない状態のまま生産に入ってしまう。でも日本は、生産しながら、相談しながら、ちょっとずつ良くしていける。ポスタルコにも、もう10年以上つくり続けているプロダクトがいくつもあります。

アユミ:アメリカってイノベーション至上主義で、常に次の新しいものを探していて、そういうメンタリティはあまり健康的じゃないですよね。ひとつのものを一生かけてつくり続ける、そういう積み重ねがないといいものはつくれないと思うんです。

マイク:日本の伝統技術を使って新しいプロダクトをつくるというのは、ひとつの大きなテーマです。今も8代続く和紙の職人さんと一緒に仕事をしていますが、見方とか意識の高さに驚かされます。やっぱり重ねてきた経験が違うから。

アユミ:何かにこだわるっていう文化は、すごくステキ。それがあると自分も背筋を伸ばして生きられると思うし、文化はこだわりから生まれるから。

マイク:アメリカの工場にお願いすると、僕たちがお客さんになって上下関係ができてしまいがちだけれど、日本にはそれがなくて、同じ立場でものづくりができる。日本にいなかったらきっと、私たちのつくっているプロダクトは全然違うものになっていた気がします。あと、日本は食べ物がおいしくて毎日食べても飽きない(笑)。

ナージャ:世界中の食べ物が味わえるし、本当にいいですよね。私は47都道府県すべてに行ったことがありますが、どこに行っても必ず、地元ならではの食材や料理に出会うことができます。

マイク:何かの記事で読んだのですが、日本は世界で一番、創業100年以上の老舗の会社が多いらしいんです。それも、すごいことだなあと思って。

ナージャ:スタートアップをつくるのとは全く違う考え方がないと、そこまで続かないと思うんです。数百年も続いていたら、もしかしたら今流行っているやり方も、どこかで1回ぐらい試したことがあるんじゃないかなって。老舗の方はなかなか多くを語らないけれど、すごくいろんなノウハウを持っていると思うんです。

マイク:文化もずいぶん変わっているはずなのに、一人ひとり手渡しで受け継いでいる。それは流行ではないですよね。

ナージャ:伝統は守りつつも、時代に合わせながらやっているんでしょうね。

アユミ:伝統って守るものじゃなくて、アップデートしていかないとなくなってしまうもの。新型コロナをきっかけに、地方に移住する若い人たちも増えているので、その波に乗って、みんなでムーブメントを起こしたい。日本文化はそろそろ、歌舞伎とか相撲だけじゃなくて、世界に向かって広がった方がいいと思って。

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