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「社会正義」とどう向き合う?国民文化で変わる広告表現

渡邉 寧

ダイバーシティ、インクルージョンにまつわる世界の広告表現が先鋭化する中、日本もこれらの変化に追随すべきか。異なる文化的価値観が背景にあることを理解するヒントとして、「ホフステードの国民文化6次元モデル」を用いて解説する。

マイノリティ表現に感じるギャップ

カンヌライオンズをはじめ、今年の広告関連アワードの受賞作品を見ていくと、大半が社会正義(social justice)に関係したものであることに気付きます。社会正義と一言で言っても、扱われているテーマは環境から人権まで多岐にわたるのですが、そんな中、目につくテーマに「マイノリティ・社会的弱者」への社会的対応があります。

Beats by Dr. Dre「You Love Me」やCity of Chicago「Boards of Change」における、黒人差別に代表される人種問題に対するメッセージや取り組み。Woojerの「SICK BEATS」に見られる難病の子どもに対するケア。Mastercardの「True Name」のようなLGBTQの人々への社会的対応など。対象となるマイノリティ・社会的弱者は異なりますが、これをテーマとして取り上げ、社会としてより包摂的であるべきだというメッセージを明確に示す作品が受賞作品に多く見られます。

一方で、日本にいると、こうしたマイノリティ・社会的弱者をクローズアップした広告が今ひとつピンとこないことがあります。海外における取り組みへの熱量との間にギャップを感じる人も少なくないかもしれません。

もちろん、日本でもマイノリティ・社会的弱者をクローズアップした広告はあります。在日コリアン・アフリカ系ルーツの子どもへの差別を取り上げた2020年のナイキのCMは激しい賛否両論を巻き起こしました。ナイキは2021年にもジェンダー格差に焦点を置いた「New Girl|Play New|Nike」という広告を出し、これもまた賛否両論の議論がなされています。LGBTQに関しても、LGBTQ就活生が自分らしい髪型で就職活動することを応援したPANTENE(P&G)の「#PrideHair」が挑戦的な事例として見られました。

しかし、こうした広告は、日本ではどちらかと言うとまだ少数の事例かもしれません。そのため、このような広告が世に出されたこと自体が、驚きを持ってメディアに取り上げられることさえあるのが日本の現状のように見えます。

女性性・男性性という考え方

マイノリティ・社会的弱者への注目は、どこか「海の向こうの話」に見える。それが日本の現状だとしたら、それはどのような要因によるのでしょうか?

海外でどのような広告表現が注目を集めるかを考える際には、その土地の文化的価値観に着目することが有効な手立てのひとつです。なぜなら、その土地の消費者/視聴者は、自分たちの文化的価値観に近い広告表現を好み、遠いものを無視する/嫌う傾向にあるからです。

オランダの社会心理学者 ヘールト・ホフステード博士は、国によって変わる文化を数値で相対的に比較する研究を行ってきました。「権力格差」「集団主義/個人主義」「女性性/男性性」「不確実性の回避」「短期志向/長期志向」「人生の楽しみ方」という6つの次元で構成されるホフステード指標を参考にすると、なぜマイノリティ・社会的弱者に焦点を当てた広告が日本でピンとこないことがあるのか、その理由の一端を理解することができます。

ホフステードの6次元のひとつに...

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