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青山デザイン会議

クリエイティブ視点で 考える防災・復興支援

小倉丈佳、木村充慶、西田修一

6月には、M6.7を記録した山形県沖地震、8月には九州北部豪雨、10月には観測史上最大ともいわれる台風19号、千葉県豪雨をもたらした台風21号など、大きな災害が相次いだ2019年。私たちの意識や備えが、改めて問われる1年となりました。

今回集まってくれたのは、「イザ!カエルキャラバン!」「地震イツモ」など、楽しく学べる防災ツールやプロジェクトを多数開発するNPO、プラス・アーツの小倉丈佳さん、クリエイターをはじめ組織の垣根を越えて集まったメンバーと、今までにない支援を考えるFUKKO DESIGNの木村充慶さん、「Search for 3.11」などインターネットを使ったさまざまな防災・復興支援プロジェクトを手がけるヤフーの西田修一さん。

阪神・淡路大震災からまもなく25年、また来年には東日本大震災から10年という節目を迎えるなかで、私たちは自然災害とどう向き合っていけばいいのでしょうか。そして、そこから生まれる新たなクリエイティブについても、お話をうかがいました。

Photo:amana photography HINANO KIMOTO Text:rewrite_W

それぞれの伝え方、つながり方

木村:僕は災害が起きると、すぐ被災地に駆けつけてボランティアをしているのですが、そうすると見えてくるものがたくさんあるんです。現地にはいろいろなニーズがあるのに、外にはあまり伝わらない。一方で、まわりには「何かしたいんだけれど、どうしたらいいのかわからない」という人がたくさんいて。それをつなぐことができないかなという想いから「FUKKO DESIGN」という組織をつくりました。

小倉:私たちは災害前、被害をいかに減らすかにスポットを当てています。きっかけは阪神・淡路大震災ですが、団体を立ち上げたときにはすでに震災から10年が経過していて、防災といっても誰も話を聞いてくれない。そこで、アート的な感動とか面白さを加えたら、新しい防災のかたちができるんじゃないかと考えました。

木村:いつも楽しく伝える、すてきな活動をしているなと思って見ていました。

小倉:防災をやっている人って、どうしても正しいことを正しく伝えようとしすぎてしまうんです。一方で、多くの人が「防災」をとっつきにくいものだと思っている。なので、クリエイティブな発想で、いかに防災といわずに防災を広めるかということをテーマに活動しています。

木村:FUKKO DESIGNは「誰もができるをデザインする」がコンセプト。2018年の西日本豪雨のときには「雨あがれPROJECT」、北海道胆振東部地震では「FUKKOツイート旅」、2019年の山形県沖地震では「もっけだの鶴岡」プロジェクトなど、新しい形の支援を行ってきました。(MITSUYOSHI KIMURA'S WORKS参照)

西田:弊社の場合は、大きく〈発災前・発災時・発災後〉3つのフェーズがあります。発災前は「Yahoo! 防災ダイバーシティプロジェクト」や、2018年と2019年の3月に実施した「全国統一防災模試」。また、災害時に特化したサービスとしては「Yahoo! 防災速報」というアプリがあって、1800万人のユーザーがいます。(SHUICHI NISHIDA'S WORKS参照)。

木村:すばらしい。

西田:被災者支援としては「Yahoo! ネット募金」や「Yahoo! ボランティア」、ユニークな取り組みとしては「ツール・ド・東北」があります。東日本大震災の被災地を自転車で回ることで復興の現状や東北の美しさに触れられて、しかも経済効果も生まれる。

木村:災害支援というと、現地で土砂かきをしたり募金したりといったイメージがありますが、楽しく旅をするだけでも被災地を応援できるんですよね。

小倉:私たちはアナログな手法で、まず魅力的な冊子をつくる。それだけでは見てもらえないので、その冊子を使って啓発できる人材の育成、さらに防災イベントや防災講座など、その人材が活躍できる場づくりも一緒に行っています。ツールと人と場、3つを組み合わせて、地道ですが着実に輪を広げていきたいな、と。

西田:ツールもわかりやすいですね。

小倉:町内会などで防災に取り組んでいる方々にツールをお見せして、伝え方をレクチャーするとスイッチが入るんです。中には僕たちが使っているものをまねて自作の模型をつくったり、新たな防災組織を立ち上げたりする方も出てきました。なかなか届かなかった想いが伝わったという達成感が、彼らを動かしているように思います。

復興支援はボランティアかビジネスか

小倉:ヤフーさんとは、社内の防災体制づくりでご一緒しています。ミッションにしたがって課題を解いていくと、誰でも消火や救助、情報収集などの初動対応ができる仕組みで、実現できればとても画期的。まだ課題も多いのですが……。

木村:ヤフーさんは会議室にもヘルメットが置いてありますよね。すごいなあ。

西田:つい最近も全員で、階段でビルの下まで降りる防災訓練をしました。ただ、日常の業務を止めなければいけないので、なかなかハードルが高くて。これをどう当たり前化するかが、まさにお2人が取り組んでいることだと思いますが。

木村:素朴な疑問ですが、ヤフーさんは、防災や復興に対する取り組みをビジネスという視点でやっているんですか?

西田:そこまで計算していないというのが正直なところですが、ある種DNAみたいなものはあるかもしれません。インターネットの利点は、誰もが等しく情報を得られること。災害時はとくに、それが強く求められるので、インターネットを事業のコアにしている我々としては、全力で取り組まなければならない。それが結果として、ヤフーの価値を上げることにもつながっていくという考え方です。

木村:千葉県豪雨でも、屋根の張り替えをボランティアでやっている人と、仕事として有償でやっている人がいましたが、お金をもらっている人のほうが長続きしていたように感じます。もちろん、ある一定期間は、無償や善意で動くのも大事ですが。

西田:世の中のためにもなるし、会社として得るものもある。どちらも叶うという方法を探るのが重要かもしれません。たとえば、2014年にスタートした「Search for 3.11」。これは「3.11」と検索すると、ひとりにつき10円が寄付される、いわゆる「コーズ・リレーテッド・マーケティング」(社会貢献に結びつく販促キャンペーン)で、2019年には600万人が参加しました。

小倉:すごい人数ですね!

西田:検索という誰もが知っているUI・UXと、風化防止や復興支援という文脈を掛け合わせることで、ブランド認知や好意度も上がるし、被災地にお金も送れる。続けられるポイントを、しっかりつくっていかないといけないのかなと。

木村:これは一方的に尊敬しているんですが、ヤフーさんは、石巻ベースというサテライトオフィスをつくっていますよね。企業の被災地支援というと、物資を送るだけで終わってしまうことも多いのに。

西田:東日本大震災のときは、当時の社長をはじめトップが、かなり早いタイミングで現地に入りました。インターネットは場所にこだわらないというのが利点ですが、一方で社内では「現地」「現場」という言葉がよく使われます。そこに行かないとわからないことや空気感にしっかり触れてこい、という文化がありますね。

木村:僕自身は広告クリエイターなので、その立場からいうと、災害のときって、あらゆる課題が溢れ出すんです。もしクリエイターの仕事が課題を解決することだとしたら、こんなに活躍できる場面はない。

西田:たしかにそうですね。

木村:残念なのは、みんなあんまり現場に行かないこと。僕は現場に行って何かを感じたり、被災した人と関係ができたりしたうえで何かをつくるのが正しいプロセスだと思っているので、現場に行かず、アイデアだけを考える人とは一緒にやりづらいな、っていう想いも少しあるんです …

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