「足す」ことで生まれるオリジナリティ
今から20年以上前、「横浜トリエンナーレ2001」に行ったとき、ある作品の前に人だかりができていました。作品を見ている人たちは何だか楽しそうで、時折笑いも起きている。
資生堂/パーフェクトルージュ
資生堂「パーフェクトルージュ」の広告を初めて見たのは、大学生のとき。ドラフトのD-BROSへの入社が決まり、アルバイトとして働き始めたときでした。仕事で手が空いたときは、いつも社内の本棚から作品集などを取り出して見ていました。ある日、『ADC年鑑』を開いたときに衝撃を受けたのが、この広告でした。
当時、僕が勝手に想像していた広告のつくり方は、まずコンセプトとロジックを固めてから、具体的なクリエイティブをつくる・・・というように、かなりガチガチにつくりこむイメージでした。でも、この広告はそんなことを感じさせず、見た瞬間にスッと自分の中に入ってきて、「あ、いいな」と思えたんです。商品である口紅とそれを使っている女性、そして商品名のみという、そぎ落とされたデザインで、実にシンプル。そのビジュアルの何がいいのか、具体的には説明できないのですが、とにかく当時の自分に響くものがありました …