GOのクリエイティブディレクター砥川直大さんは、現業と並行して2019年よりクラウドファンディング「Readyfor」のソーシャルプロデューサーも務めている。「社会への問いを一緒に考え、作り出す」ことが、いま求められていると話す。
砥川さんが考える「クリエイティブディレクション」とは?
事業成長やブランド好意に繋がる、
社会への問いを一緒に考え、作り出すこと。
表現よりさらに川上から課題に取り組む
──最初に、ADKからGOに移られた理由を教えてください。
僕はADKで14年働いて、2017年11月にGOに移りました。理由はいくつかありますが、1つは変化がほしい、新しいチャレンジをしたいと思ったことです。CDになると、クラフトで突き進むか、ビジネスに入るか、2つの道がありますが、僕は表現だけでなく、事業そのものの支援をやりたかったので、「変化と挑戦を応援する」というGOの掲げる姿勢に共感して移籍しました。
また、近年は知識やスキルを無償提供して社会貢献するボランティア活動「プロボノ」で、個人で動く機会が増え、指名で仕事が来るようになってきたなかで、広告会社のコミッションでお金をもらうことに違和感を覚えるようになっていたこともあります。さらにもう1つ、社外の人と会って話をすると、広告会社には依頼されない多様な課題がたくさんある。そういうのを知るにつれ、もっと違った視点で働いたり、もっと川上のところから関われるような仕事をしたいと考えたからです。
──プロボノを始めたきっかけは?
自分は恵まれた境遇にあるという自覚があり、身につけたスキルを社会に還元したいという思いが、以前から僕の中にありました。実際に動くきっかけになったのは東日本大震災。あのときに何もできなかったことに対する自責の念があり、プロボノをはじめました。その頃、僕はクリエイティブ職に就いて10年目で、自分のスキルが世の中にどのぐらい機能するか確かめたい気持ちもあったんです。最初にお手伝いしたのは、ホームレス支援団体のWeb制作。
その時わかったのは、社会課題に向き合っている人たちは熱意や思いがあるものの、「伝えるのが苦手」ということでした。だからこそ、僕らが仕事で会得した「伝える、広めるスキル」が社会に役立つ可能性があることを実感したんです。その後、アドフェスやスパイクスなど海外広告賞の審査員を務めたタイミングでソーシャルグッドの流れが来て、僕は1人のクリエイターとしてクリエイティビティで社会課題を解決する海外の事例に嫉妬したし、自分も日本で実現したいと思うようになりました。
──確かに今は社会課題への取り組みが大きな流れになっていますね。
あらゆる企業が社会課題に着目せざるをえない社会背景があると思います。商品もサービスもコモディティ化していくなかで、同じ商品ならばプラスアルファでどのようなメッセージを発信するかが大事になっています。つまり、モノを買うのではなく、会社のビジョンそのものを買う時代に変わっているんです。だから僕たちCDの仕事はプロダクトのことだけではなく、それとセットでどういうメッセージを発信するかが重要になっています。
例えばパタゴニアは売上の1%を必ず環境保護に使っていて、そのビジョンに共鳴してファンが増えているし、今は働き方改革で店舗の営業時間を短くしていますが、売上は変わらないそうです …