クリエイティブディレクターの梅田哲矢さんを中心に、8月7日に新会社「NEWS」の設立が発表された。スタートアップ企業に対してクリエイティブの知見を「投資」し、ビジネスにおける成長をサポートするという同社の設立経緯やビジネスモデル、11名のメンバーが担う役割などについて聞いた。

左から、梅田哲矢さん、最所あさみさん、佐々木芳幸さん
梅田さんが考える「クリエイティブディレクション」とは?
未来を予測し、その未来へ導くこと。
想像力という武器を
つくることだけでなく、
つくった後にも発揮させることで、
社会の反応から、つくるべきもの、
つくるべきチームを逆算し
ディレクションしていく。
「何のためにつくるのか」という"そもそも論"から関わる
──設立のきっかけをお聞かせください。
梅田:2つの課題意識があったからです。まず、クリエイターの内発的視点からいまの広告業界を見たとき、「何のためにつくるのか」を置き去りにしていることに対する心理的な疲弊がありました。数十年前の日本なら、"三種の神器"と呼ばれるような家電が出回り、その後もパソコンやスマートフォンなど生活の基礎となるイノベーションが次々に生まれて、ダイナミックな動きをクリエイティブの力で手助けしているのだと実感できたことでしょう。
ところが、僕と同世代のクリエイターたちは、発明というより改善に近いレベルの細かいイノベーションを支えるような仕事を続けて10余年のキャリアを積みました。刻々と変わり続ける生モノのようなマーケットにスピード感を持って対応してきたおかげで、難易度の高い課題を解決する力がついたという自負があるからこそ、もっと大きく社会を前進させられるような働き方はないのかを模索するようになりました。『坂の上の雲』に雲がないとただの辛い坂になる。同じ坂なら雲のある坂に登りたいじゃないですか。
潤沢なマーケティング予算を持つ大企業に力を貸して年商を『10% +』に導くビジネスも否定しませんが、まだ今は体力のないスタートアップの年商を『10 ×』に導くことにかけるやり方を探ってみたかったのです。というのも、1年半ほど前からスタートアップと仕事をする機会が増えて、社会に貢献しているとか、世の中が前に進んだという手応えを得ていたからです。
そして、もう1つの意識は、クライアントとクリエイティブの関係性の課題意識です。アウトサイダーとして後付けでマーケティング活動に加わるより、経営者に近いインサイダーの立場から重要な意思決定や課題解決のサポートに関与できることに可能性を感じました。最初から素材(=事業・サービス)に話題性を練り込んでおくイメージです。商品が完成した後になって「この商品をどう話題にしようか」と不自然な議論をする必要はありません。プロモーションも映像も、リリース後にどんなニュースになるかも、明確にビジュアルが浮かんでいる状態で話を進めていけます。
スピード感が増すだけでなく、何より効率がいい。究極的には何もつくらなくていい可能性だってあります。つくらないクリエイターって新しい。そこで、学生の頃からの友人でありNEWPEACEでさまざまな新産業のビジョンを創って仕掛けてきた高木新平(「NEWPEACE」代表)に、そろそろ一緒にやろうと声をかけ、佐々木芳幸(monopo 代表取締役)と3人で合同会社を立ち上げました。
──会社同士の提携ではなく、クリエイター個人が集うギルドにした理由は?
梅田:「クリエイターは黒子であるべき」という考え方はもう古い。個人がメディア化する時代に会社単位にこだわる人は、時代においていかれるイメージがあります。各個人がメディア化して、作品を積み上げていくのが今のやり方だと思います …