編集部が街で気になった様々なデザイン
BOOK
谷川俊太郎『普通の人々』
(スイッチ・パブリッシング)
- 装丁/宮古美智代
- I/ヤマグチカヨ
谷川俊太郎さんの新刊は詩の本には珍しく、本文にイラストを多用している。デザイナー 宮古美智代さんは装丁を手がけるにあたり、谷川さんから3つのリクエストを受けたという。ひとつは、モノクロの線画がランダムに全編に入っているイメージ。描かれているのは人物の全身、半身、後ろ姿などさまざま。作中の人名と絵を連動する必要はない、ということ。
「絵をランダムに入れてよいとのことでしたので、詩と絵が自由に行き来するような、動きが感じられる本になるといいと思いました」。宮古さんの意図を汲み、イラストレーター ヤマグチカヨさんが公園や街中にいる人たちをモデルに150人以上描いた。「その絵の中から詩の中に出てくる人名や描写とくっつきすぎないように絵を選びました」。
白いカバーには、桜の木など風景が空押しで描かれている。「カバーを風景にすることを決めたとき、編集者、ヤマグチさん、私がいいなと思う並木道があり、その木が桜でした。当初は淡い色を使って進めていたのですが、桜の木が思った以上に"春"を主張するので、色をつけず、空押しにしました」。
出来上がった本を見た谷川さんは「こんなに絵が入った詩集を出したのは初めてなんじゃないかな」と、宮古さんに話してくれたという。
CD
Kan Sano『Ghost Notes』
(origami PRODUCTIONS)
- AD+アートワーク/岸本敬子
Kan Sanoさんの新作のジャケットには、艶かしい横顔が印象的なコラージュの作品が使われている。「この横顔、実はKanさんご本人です」と明かすのは、デザインとアートワークを手がけた岸本敬子さん。この2年間、岸本さんはコラージュ作品を毎日インスタグラムにアップしており、それを見たKanさんから新作のデザインを依頼されたという。アルバムタイトル「Ghost Notes」は音楽用語で、楽譜で表現されないようなかすかな音を指す。「今回、そういう音をあえて作って入れていると聞き、瞬間的な偶然性で生まれるコラージュとの親和性を感じました」。
岸本さんはKanさんが撮影した風景や植物、本人の写真をザラ紙にプリントし、コラージュの素材として使った。「手や顔、植物を使ってほしいというリクエストがありましたが、それ以外は自由に作らせてもらいました」。タイトルの文字は、割り箸を筆に岸本さんが墨で描いたもの。コラージュもすべて手で切り貼りし、紙の影もそのまま生かしている。
実は岸本さんとKanさんは...