編集部が街で気になった様々なデザイン
BOOK
又吉直樹/武田砂鉄『往復書簡 無目的な思索の応答』
(朝日出版社)

- 装丁/重実生哉
又吉直樹さんと武田砂鉄さんの往復書簡をまとめた書籍のカバーは、美しい青と黄のマーブル模様が目を引く。「人気の著者ゆえに、当初は2人の名前を大きく入れた案を出しましたが、編集の方から人目をひくことよりも本としての佇まいを大切にしたい。少し古風な、でも新しさのあるデザインを…という難題をいただきました(笑)」と、装丁を手がけた重実生哉さん。
本文を読むと、2人のやりとりが心地よく感じる一方で、どこかピリピリとした関係性も見えてくる。「付かず離れず、混じるようで混じらない。そんな2人の文章から思いついたのが、マーブル模様でした」。マーブル紙を探したが、工芸品として完成された模様ばかりで「無目的な…」というにはふさわしくない。そんな時にストックフォトで見つけたマーブル模様が、この本にしっくりと合った。そこに載せるタイトルには、活版で組んだ書体を使っている。「デジタルフォントにはない書体なので、ちょっとした違和感と本としての佇まいを演出できたのではと思っています」。
模様にある青と黄をそれぞれの著者の色として立たせ、見返しにも使った。この色は、ポスターなど販促物にも展開されている。
CD
細野晴臣『HOCHONO HOUSE』
(ビクターエンタテインメント)

- AD/岡田崇
細野晴臣さんの1973年のソロデビューアルバム『HOSONO HOUSE』を丸ごと新録した『HOCHONO HOUSE』は、写真家 野上眞宏さんによるオリジナルジャケットの写真をベースに制作されている。「オリジナルジャケットをベースにしながら、46年後の細野さんをどう表現するかということが命題でした」とデザインを手がけた岡田崇さん。
オリジナルジャケットの印象があまりにも強く、デザインの方向性を模索した。「新アルバムの制作過程や音の方向性などから、かつての『フィルハーモニー』『S・F・X』のイメージを取り込んでいくと突破口が見えそうだと思っていたところ、『HOSONO HOUSE』に『S・F・X』の顔を貼り付けた、細野さんの自作による画像を見せていただき、なーんだ、同じこと考えていたんだ、と」 …