編集部が街で気になった様々なデザイン
CD
グルパリ『GLASS, METAL, PLASTICS』
(HEADZ)

- AD+撮影/石塚俊
シンガーソングライター グルパリさんの初アルバムジャケットには、ストロボの光で顔の表情が飛んでしまった写真が使われている。帯を外すと、見方によっては少し不気味に感じる写真のみになる。「当初は本人の顔を使うつもりで撮影していたのですが、後日、写真を見ながら彼の歌詞を改めて読んだとき、あ、こっちの写真だなと思ったんです」と話すのは、撮影とデザインを手がけた石塚俊さん。
「彼は"自分のことが分からない"と歌で問い続けていたり、"顔が思い出せない、君はいない"と歌っていたり。常にさまざまなことに対する問いかけを続けている人。実体がないように見える彼にIDを与えたくなって、写真の片隅に流通用のバーコードを置きました」。
タイトルなどが記された帯、曲名などを書いた名刺サイズのカードは、何度もコピーしてかすれた文字や白黒反転させた本人の手描き文字で構成されている。そこだけ、本人が手作りしたかのような印象を受ける。「路上での弾き語りや絵の個展を開くなど、独自の美意識を持って活動している人なので、そういう彼の生っぽい部分をむき出しにしてしまおうと考えました」。グルパリというアーティストの独自性が、このジャケットからひしひしと伝わってくる。
BOOK
夢枕貘(文)/松本大洋(絵)『こんとん』
(偕成社)

- AD/祖父江慎
- D/藤井瑶(コズフィッシュ)
中国神話に登場する「混沌」の伝説をもとに夢枕獏さんが文を綴り、松本大洋さんが絵を描いた絵本『こんとん』。その表紙には、目、耳、鼻、口を持たない不思議な生き物の姿。白い毛並みが、そのまま本になったように見える。
ブックデザインを手がけた祖父江慎さんと藤井瑶さんは、「大洋さんとの仕事はいつも早い時期から打ち合わせをすることが多く、今回も先に夢枕さんの文章だけ読んだ時に『一体どんな絵になるんだろう?』と想像できませんでした」。「"こんとん"と聞いて初めは黒い生き物が浮かんだのですが、松本さんの中では白のイメージがあり、真逆の想像をしたのが面白かったです」と話す。その白の厚みや奥行きを4色印刷でいかに出せるかが肝となった。
表紙や帯、扉には質感のある紙を使っており、本を手にした時、その違いを感じる。「デザインする上でこんとんが触覚や気配を通じて関わっている世界はどんなものだろうと考えました」と藤井さん。タイトルと本文には秀英にじみ明朝体を使用した …