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コンセプトを体験する新しい空間

クリエイティビティを刺激するアートサイエンスの発信地が誕生

大阪芸術大学アートサイエンス学科棟

2018年11月、大阪南河内郡にある大阪芸術大学(以下大阪芸大)のアートサイエンス学科棟が竣工した。設計を手がけたのは、建築家 妹島和世さん。2010年には、建築界のノーベル賞と呼ばれる「プリツカー賞」を受賞している。妹島さんが設計した新校舎は、丘の上の立地という特性を生かした開放的な空間になっている。

撮影:中道淳/ナカサアンドパートナーズ

丘という立地と一体化する建物

大阪芸術大学正面の入り口の坂(通称 芸坂)を登ると、その左手に位置するアートサイエンス学科棟。地上2階、地下1階の建物で、3つの大きな展示スペース、4つの講義室、5つのスタジオほか、教員の研究室もある。のべ床面積は約3176平方メートル。特徴的なのは、三層に重なったひさしのような幅広い屋根だ。建物が建つ丘に連なるように緩やかな曲線を描く。その特徴的なデザインは、大学の新しいランドスケープとなっている。

妹島和世さんが、新校舎の設計を引き受けることになったのは、いまから3年前。2016年に大阪芸大アートサイエンス学科新設の認可が文部科学省から下りた直後である。「アートサイエンス学科は、芸術・情報・社会という3領域を横断しながら、21世紀型の新たなクリエイターを育成することを目指した、日本の大学では初となる学科です。クリエイティブの未来を見据えた、これまでにない新しい学科の校舎のデザインをお願いするのに、まず思い浮かんだのが妹島さんでした」と、クリエイティブディレクターの内藤久幹さんは話す。

以前に同大名誉教授だった高橋靗一さんに招かれ、大阪芸大を訪れたことがある妹島さんだが、改めて学内を案内してもらって気づいたことがあるという。

「大阪芸大のキャンパスは30年にわたり、高橋靗一先生が作り上げられたもの。改めて拝見すると、この土地の地形を生かして、色々な場所がつながるように配慮されて設計されていることがわかりました。新校舎が建つ場所は、そのキャンパスの突端にある。そこで既存のキャンパスにつながるように、そして元々のキャンパスは丘の上にあるということを感じられるような建物にしたいと考えました」(妹島さん)。

完成した校舎の1階部分はほとんどの壁面がガラスで、メインの入り口以外にあらゆる方向から出入りが可能な開放的な空間になっている。校舎を取り巻く木々の緑や空など外の風景をどの場所からも見ることができ、ガラスを介して内側の空間とシームレスにつながる。

「この大学では学生たちが美術だけではなく、映画、音楽、ダンスなど多様な領域を学んでいて、スタジオやホールなど施設も色々ある。そういう環境はほかにはないので、とても面白いと感じました。そして、この建物はアートサイエンス学科の新校舎ですが、大学の入り口にあるので、同時に学科を超えてさまざまな人たちが集まる、開かれた場所にしたいと思いました。お互いを尊重しながら、一緒にいる人たちの多様さをポジティブに受け止められる、そんなボーダレスな空間を目指しました」(妹島さん) …

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