いま世の中で話題になっているCMをつくっている人たちはどのように企画を考え、映像を作り上げているのか。今回は、ジムビームの広告などを手がけるSIX 野添剛士さんです。
縦軸(モノから体験)、横軸(時間)さらにZ軸(売る力)の3軸で考える
足立:ジムビームの広告は、ローラさんを起用して4年目を迎えましたね。
野添:ジムビームは、ローラさん以前から長年担当しています。それゆえに居合斬りのように企画を出すのではなく、ブランドのコンディションがどのように変わっていき、今の重心がどこにあるかを意識しながら広告をつくっています。僕は自分が担当するブランドでは縦軸と横軸、そしてZ軸があると想定して企画を立てているんです。
足立:Z軸?それは何ですか?
野添:縦軸はモノから体験への変化、横軸は時間、Z軸は売り場に対する力です。商品が認知されて売れていくと、コミュニケーションのフェーズ、つまり言うべきこと、やるべきことが変わっていきます。
ジムビームは2013年にレオナルド・ディカプリオを起用したときは、国内で商品が認知されていなかったので、世界的なタレントと「WORLD'S No.1」というコピーで、とにかくバーボンの中でのポジショニングを獲ろうとしました。一方で、閉鎖感がかっこいいとされていた従来のバーボンに対して、"開かれたバーボンこそが次の時代のバーボンである"というメッセージを打ち出していったんです。
足立:当時はジムビームという商品を日本に根づかせるフェーズだったんですね。
野添:そうです。開かれたバーボンだからグラフィックのカラーも白にして、スタイリッシュでオープンネスを感じさせるものにしようと、CMも開放感のある場所で撮影しました。狙ったコンセプトに合わせて全体を構成していき、ブランドの体積ができてきたところで、「ウイスキーのスタンダードになる」という次のフェーズに入りました。
そのタイミングからより開いていくことを考えて、タレントも日本人で、アイコンとしてスタイリッシュな人を探しました。どこかに"洋酒感"も持たせたかったこともありハーフタレントで、勢いのあるローラさんを起用することにしました。それが2014年のことですね。
足立:ディカプリオからローラへ、この提案は勇気がいったのでは、と想像します …