いま世の中で話題になっているCMをつくっている人たちはどのように企画を考え、映像を作り上げているのか。第8回目は、国内外で注目を集めた「さけるグミ」を企画した博報堂 井村光明さんです。
あえて大人に向けた「さけるグミ」のCM
足立:UHA味覚糖の「さけるグミ」のシリーズは、今年のTCCグランプリ、カンヌライオンズでフィルム部門シルバーを受賞されました。おめでとうございます。
井村:ありがとうございます。「さけるグミ」は自主プレから始まったもので、3年前から担当しています。この商品は、文字通り割いて食べるグミ。他の商品にはない、明確な特長があるのでCMはつくりやすいのですが、"割く"ことをオチにすると子どもだけが買うターゲットの狭い商品に見えてしまいます。だから「さけるグミ」のCMは会社を舞台にし、大人に向けて制作しました。
その後、全長40cmの「なが〜いさけるグミ」の発売が決まり、UHA味覚糖の山田泰正社長からは「ニッチではなくメジャーな商品に見せたい」というお話がありました。やはりその時も、子どもが登場して長さにビックリ、というオチで終わる企画ではダメだと思ったんです。
足立:長くなったことだけをアピールするだけでは、コミュニケーションとして物足りないと。
井村:はい。普通に考えると、CMの最後のナレーションは「さけるグミからなが〜いのが、出た」という感じになりますが、そうするとニッチな商品からさらにニッチなものが出たように見えてしまいます。それよりも「さけるグミ VS なが〜いさけるグミ」のように、あまり説明をしない言葉のほうが堂々として、存在感がある。そこからCMを考えていきました。
周りの人に、企画に対する意見を聞く
足立:井村さんは農学部のご出身ですが、なぜ広告会社に入ろうと思ったんですか。
井村:僕が在籍していた農学部は、学生の大半が大学院に進むんです。でも僕は院に行く気はなくて、かといって就職して何がやりたいのか、自分でもわかりませんでした。結局、ひとつに絞り込めなかったので、幅広い商品を扱う広告会社と商社だけを受けることにしたんです …