編集部が街で気になった様々なデザイン
CD
蓮沼執太フィル『アントロポセン』
(日本コロムビア)
- AD/佐々木暁
- アートワーク/ジム・ダーリング
蓮沼執太フィルのアルバムタイトル「アントロポセン」とは、新しい地質時代「人新世」を意味する。「蓮沼くんはこのタイトルに"現状への危機感"という気分を込めていました。でもそれは都市生活を否定しているわけでも、社会に警告しているわけではなく、この日々の生活をちょっと見直してみようよ、というもの。音楽活動のなかで得た"すごく些細で前向きなオーラ"というものが、そのままこうした問いへのヒントになっている、と言っていました」と、デザインを手がけた佐々木暁さんは話す。
それを受けて、佐々木さんがイメージしたのが「飛行機の窓から見える風景」だ。「例えば宇宙から地球を俯瞰しているのでは、ちょっと問題意識が大きなものとして伝わりすぎる。文明を享受しながらも日常を見つめ直すには、飛行機の窓から眺める地上、くらいの距離感が実感のあるものになるのかな、と考えました」。
写真では生々しくなりすぎると感じ、絵を描いてくれる人を探す中で、アーティストジム・ダーリングさんの作品「Airplane Window Paintings」を見つけ、コンタクト。快諾を得て、ジムさんの絵を使うことになった。「当初は特殊仕様の案もあったのですが、最終的にアルバムの意図を素直に汲み取るかたちにたどりつきました」と、佐々木さんは話している。
BOOK
林木林(作)/庄野ナホコ(絵)『せかいいちのいちご』
(小さい書房)
- 装丁/鈴木千佳子
絵本『せかいいちのいちご』は、ピンクの地に描かれたシロクマの絵が目を引く。「庄野さんの絵はかわいいけれどリアルな描写。物語もシンプルだけど、ちょっと怖いと感じさせるところがある。表紙はそういう部分を醸し出しながらも、かわいくて思わず手に取ってしまうものにしたいと思いました」と、デザインを手がけた鈴木千佳子さん。
表紙の絵は、庄野さんに新たに描き下ろしてもらった。「読者が物語を読み進めるときに主人公の気持ちに目が向くように、その過程ではなく、結末をストレートに表紙に出したほうがいいのではないか」と考え、一粒のいちごを持つクマの絵に。そして絵のタッチが生きるように、背景はピンクの特色を指定している …