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スタンダードへの道

オハヨー乳業 中村さんに聞く 焼スイーツの新しいあり方

聞き手:水野良樹(いきものがかり)

世の中でヒットしている商品は、どのような道をたどって生まれ、その後定着して、「スタンダード」になっていくのか。さまざまな商品の原点から現在までを人気ユニット「いきものがかり」の水野良樹さんが、自らの曲づくりと重ね合わせてインタビューします。

(右)オハヨー乳業 マーケティング戦略本部 カテゴリー戦略1部 デザート企画課 課長 中村博司
(左)いきものがかりリーダー、ギター、作詞・作曲担当 水野良樹
Photo:parade/amanagroup for BRAIN

開発に13年かかった「焼プリン」

水野:僕は曲をつくるとき糖分がほしくなるので、プリンをいつも横に置いています。御社の「新鮮卵の焼プリン」にもお世話になっているのですが、この"焼く"というアイデアはどうやって生まれたんですか?

中村:表面に焼き目をつけた「焼プリン」は今から約25年前の1992年に弊社が初めて日本で市販化した商品です。当時、開発担当者がヨーロッパ出張に行った際、焼いたプリンがスーパーなどで普通に売られている光景を見たそうで、帰国してから何とか再現できないかと試作をスタートしました。でも実際につくってみると、賞味期間の保持が難しかった。さらに、プリンに香ばしい焼き目をつけるのも前例のないことです。何度も試行錯誤を繰り返して、発売するまでに13年かかっています。

水野:えー、13年も!?

中村:賞味期間の問題については、卵は雑菌がつきやすいこともあって、通常の製造方法ではクリアできなかったんです。そこで開発担当者が無菌状態の卵を求めて複数の卵メーカーに声をかけたのですが、「管理が難しいから」と断られてしまって。それでも担当者はあきらめず、加工された卵ではなく、割卵前の生卵を仕入れて使うことにしました。そのため、1分間に500~600個の卵を割る割卵機も自社工場に導入しています。当時、割卵機を導入してまで商品を製造しているメーカーは他になく、いまでも多くの食品メーカーでは加工しやすいように液状化した「液卵」を仕入れて使っているはずです。

水野:かなりの労力と資金が必要だったと思いますが、それをあきらめずに続けたのは勝算があったからですか?

中村:どうでしょうか(笑)。弊社は戦後に岡山からスタートした後発の乳業メーカーですが、味づくりに関しては非常にストイックな企業です。原料を吟味し、おいしいものを丁寧につくろうという企業文化があります。

例えば、弊社が発売しているフルーツヨーグルト「ぜいたく果実」シリーズも、原料メーカーで加工されたフルーツソースを使うのではなく、フルーツそのものを仕入れて、自社工場で丁寧に加工することで、より風味豊かな味わいに仕上げています。ヨーグルトメーカーで同じことをやっているところは、他に聞いたことがありません。焼プリンも同様に、おいしさ、焼き目、品質保持など、さまざまなポイントをクリアして、ようやく発売できた商品なんです。

「焼スイーツ」という新たな挑戦

水野:御社はさまざまな商品を出されていますが、焼プリンのようにスタンダードになる商品もあれば、開発してもなかなかヒットせずに残らない商品もあると思います。その差はどこにあると思いますか?

中村:スタンダードというのは難しいですね…。弊社のプリンの中では、「新鮮卵の焼プリン」がスタンダード、真ん中と捉えられていると感じます。どこにでも売っていて、いつ食べてもおいしく、満足できる量もあって、価格も手頃という、定番の安心感があると思っていただいているんでしょうね。

水野:「どこでもおいしい」というのは難しいですよね。北海道や沖縄のように違う環境でも販売されていると、言葉にすると簡単ですが、その基本を押さえるのが開発するうえでは難しいのかなと。

中村:そこは発売以来、よき競争相手である他社メーカーさんと切磋琢磨しながら市場を開拓し、進めてきたところだと思っています。ただ、強気の値段設定でうまくいくこともあれば、それだけでは難しいときもあります。だからこそ、価格や品質、味わいなどは常に見直してきました。今はこの「新鮮卵の焼プリン」をど真ん中に位置づけていただいていますが、それだけでずっとやっていくのは難しいというのが正直なところです。新しいスタンダードをつくっていくことが弊社の課題で、今春にはその一環として、「焼スイーツ」3品を同時発売しました。

水野:焼スイーツは「なめらか焼プリン」、「まろやかチーズ」、「夏限定チョコミント」の3種類ですね。2品は明らかにこれまでと違うフレーバーですが、開発した意図は?

中村:「焼スイーツ」の開発にあたり、改めて「焼プリンとは何か?」を問い直しました。単純に「焼き目がついている=焼プリン」とするのではなく、オーブンでじっくりと焼き上げる製法を生かした新しいデザートの提案ができないかと考えたんです。

水野:一度、ゼロベースにされたんですね。

中村:そうです。「プリンの定番はカスタード」という先入観も外しました。例えばチョコミントは焼き目がついていませんので、「焼き目を期待するお客さまはどう思われるか?」など多数の議論がありました。

また、今までの焼プリンは、シズル感を演出するため表面の焼き目が見える蓋材を使用していましたが、焼スイーツでは半透明の蓋を使用しており、上から焼き目は見えません。それでも、丁寧に加工して、オープンでじっくりと焼き上げて、新しいデザートをつくりたいと思いました。プリンは子どものおやつというイメージがありますが、ワンランク上の上質なデザートを目指したいな、と。

水野:「焼スイーツ」という新たなジャンルをつくるチャレンジですね …

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