いま世の中で話題になっているCMをつくっている人たちはどのように企画を考え、映像を作り上げているのか。第6回目は、NetflixでドキュメンタリーCMを手がけた電通 山上陽介さんにインタビューします。
従来の見方を変えるCM
足立:山上さんは1999年に電通に入社後、最初から配属はクリエイティブでしたか?
山上:はい、そうです。僕が新卒で配属された頃は、コピーライターになるならとにかく「数を書け」と。当時の先輩に「パラダイムをシフトさせることができるのがコピー。商品でも世の中でも、その文脈をちょっとだけ変えるような言葉をつくれ」とよく言われました。その頃は今ひとつ意味がわからなかったのですが、今はその通りだと納得していて、そういうことを意識しながらメッセージや企画を考えています。
足立:「パラダイムをシフトさせる」とは、具体的にどういうことでしょうか?
山上:僕が担当したNetflixで言えば、以前は「地上波テレビVS有料配信サービス」という構造で語られていました。Netflixはテレビに比べて「いつでも見られる」「コンテンツがたくさんある」と、明確に言わないまでも「比べて」という意識が見え隠れしていたんです。
でも僕は今回「VS」や「or」という文脈を辞めて、「テレビ&Netflix」と「&」に変えたいと思ったんです。テレビもいいけれどNetflixもいいよね、と世の中の人たちに思ってもらえたら、双方にとっていいことだし、日本のエンターテインメントをさらに盛り上げる流れをつくれるんじゃないかと考えました。
足立:明石家さんまさんがテレビとNetflixを繋いでくれる役目の「&」としてCMに出演しているということですね。
山上:その通りです。テレビでは「Theお笑いモンスター」であるさんまさんにNetflixのCMに出演してもらうのであれば、その真逆でお笑いは一切なし、極力演出を排除するために演出家も入れずにドキュメンタリーで剥き出しのコンテンツをつくろうと思いました。従来と同じようにお笑いモンスターとして出演してもらうと「テレビのほうが面白い」「テレビの真似」など、対立構造が見えてきてしまう。そうではなくテレビではやっていないことを、このCMではやりたかったんです。
足立:クライアントのNetflix側からはどのような課題、要望を提示されましたか? …