編集部が街で気になった様々なデザイン
BOOK
岡啓輔『バベる!自力でビルを建てる男』
(筑摩書房)
- 装丁/佐藤亜沙美
岡啓輔さんは、2005年から東京・三田に鉄筋コンクリート構造のビルを自らの手で建てている人。そんな岡さんの著書の装丁は、写真、イラスト、箔押しと、その建築物さながら複雑な構造と佇まいを見せる。「実際に現場に足を運んだとき、見た目のインパクトはもちろん、岡さんあっての建物だと思いました。そのため読みやすさよりも、現在進行中の建物と岡さんそのものが伝わるデザインを目指しました」と、ブックデザイナー 佐藤亜沙美さん。
カバーには、コンクリートの質感を感じさせる紙を使用。建物にかかっている足場をイメージし、タイトルにシルバー箔を押した。コストとの兼ね合いもあったが、建築中であるということとかけて、「る」の文字の途中で終わっている。
また建築物を岡さんの友人でもある人に撮影してもらったところ、岡さんが写りこんでいた。建築物だけでなく岡さんの人柄も伝わってくる写真であったため、そこにセリフを加えた。さらに描き下ろしの見取り図、書き溜めたメモやスケッチなど、岡さんの手の痕跡も表紙や扉で見せた。最初に受けた印象そのままに、岡さんそのものとも言える本ができあがった。
CD
蓮沼執太『windandwindows』
(HEADZ)
- AD/佐々木暁
- 写真/畠山直哉
蓮沼執太さんの新作は未発表音源の中から80曲を厳選し、6枚のCDに収録している。そのジャケットには、写真家・畠山直哉さんの作品が使われている。「蓮沼くんがこの6枚組のための準備やテキストの下支えにしていたイメージが、この写真でした」と、アートディレクター佐々木暁さん。
当初はノートリミングのまま使用することを考えていたが、後に畠山さんから「写真に何か変化を加えてほしい」という話があった。「表面的な加工を施しても、それではとりとめのないものに陥ってしまう。でも、どう手を加えるべきかという根拠を見つけることも難しくて、しばらく悩みました」。
それならば、いっそのこと意図を介入させなければいい、佐々木さんはそう思い至った。「そのこと自体がもう意図ではあるのですけど……。入稿締切の瀬戸際に、一発録りのように無作為にカットアップしたものでフィニッシュとしました」。
試作時、写真のプリントアウトをケースに入れる際に、紙の下部にある余白を折って入れてみた。その状態が、そのまま本番でも採用されている。「気づけば、"作為なき作為"という感じでパッケージができあがりましたね」 …