編集部が街で気になった様々なデザイン
BOOK
窪美澄『じっと手を見る』
(幻冬舎)
- 装丁/草苅睦子(アルビレオ)
- 撮影/マルティナ・マテンシオ
窪美澄さんの新作『じっと手を見る』は、手の平をクローズアップした淡い色合いの写真が目に留まる。「窪さんと編集者からエロティックな手の写真を使いたいと話があり、参考となる画像が送られてきました」と、装丁を手がけた草苅睦子さん。
本書は、富士山の見える町で介護士として働く主人公らと東京から来たデザイナーによる恋物語だが、読者がヒリヒリと痛みを感じるような展開だ。「当初、こういう写真を使うのはストレートすぎると思ったのですが、物語を読むと確かにエロティックな雰囲気があるほうがいい。でもエロティックに寄りすぎると、読者が手を伸ばしにくくなるので、その加減を意識して写真を選びました」。
写真は、バルセロナの女性写真家 マルティナ・マテンシオさんの作品。草苅さんは彼女のインスタグラムから女性の身体を撮影した写真をピックアップした。より手を強調すべくトリミングすると同時に、読む人の気持ちを考慮して余白を出したいと思い、あえて白い枠をつけている。そしてタイトルには、読んだときの印象からチクっと痛みを感じるようなオリジナル書体を使用。美しい写真ながら、物語の深みと痛みを感じさせられるカバーが仕上がった。
CD
前野健太『サクラ』
(felicity)
- AD/木村豊
- 撮影/横浪修
新作『サクラ』のジャケットで、前野健太さんはトレードマークであるサングラスをはずし、スーツ姿で肩にパプリカをはさみ、憂いを含んだ表情を見せている。撮影したのは、ファッションフォトグラファー 横浪修さんだ。「横浪さんのプライベートワークで、子どもたちが果物を肩に乗せた写真があります。そのイメージで前野さんも果物や野菜を使うことにしましたが、細かい設定は何も決めませんでした」と、アートディレクター 木村豊さん。
撮影は自然光の入る、海に近いスタイリストの家で行った。事前の準備はせず、当日その家の近所で買った野菜や果物、桜餅などを使った。肩だけではなく、サングラスの間に挟んだり、足元に置いたり、さまざまなシチュエーションで撮影した。「いつもの前野さんとは見え方が違うので、ジャケットには名前をあえて大きく入れ、写真の柔らかさに合わせて手描き風フォントを選び、色も柔らかな印象の桜色にしました」。
フォトジェニックな前野さんゆえに横浪さんも面白がって撮影してくれた結果、ユニークな写真が多数仕上がった。そこで初回プレス盤にはアナザージャケットを同封。さらに、使わなかった写真も収めた写真集の制作を急きょ決定した。こちらはツアー会場で先行発売される …