編集部が街で気になった様々なデザイン
BOOK
瀬尾まいこ『そして、バトンは渡された』
(文藝春秋)

- 装丁/大久保明子
瀬尾まいこさんの新作は、おかっぱ頭の女の子の顔が付いたオレンジ色のバトンが目を引く。「著者から“今回は文字だけでもいいぐらいの、できるだけシンプルなものにしたい”というお話がありました」と、装丁を手がけた大久保明子さん。
大久保さんが表紙に描いたのは、複数の親たちの間を行き来する主人公(女の子)をバトンで表現したイラスト。「文字だけでは、この物語に対して硬質すぎる。それに加えて瀬尾さんの読者に対して愛想がなさすぎる」と思い、自ら描いたのが“バトンちゃん”のイラストだ。シンプルであるがゆえに、色と形のバランスにはこだわったという。そして、“バトンちゃん”に透明箔を押すことで、バトンらしいツヤ感を出している。
この本は、雁垂れ加工のソフトカバーだ。この仕様では本文上部がアンカットになり、しおり紐をつけることができる。“バトンちゃん”をイメージしてオレンジ色を選んだ。「本を読んでいて一休みするとき、しおりの果たす役目は大きいと思っています。できれば本にはすべてしおりがあってほしいと思っているんです」と、大久保さん。発売後、表紙の“バトンちゃん”が好評で、社内外から「かわいい」という声が寄せられている。
PACKAGE
ナボナ
(亀屋万年堂)

- AD/小玉文
東京・自由が丘の老舗和菓子店「亀屋万年堂」からブッセの先駆けとして1963年に発売された商品「ナボナ」が、今年2月に新たなパッケージに生まれ変わった。新パッケージは、ナボナのやわらかい丸い形をモチーフとした、2つの円が描かれたデザインだ。優しい色の2つの円のうち、左側ではブッセ特有の粉砂糖の質感を格子模様で表現している。また、袋の素材も、和紙のような質感の紙に変わった。「箱に並べたときに、円(縁)が繋がっていくようなイメージでデザインしました」と話すのは、バレット アートディレクター 小玉文さん。
ロングセラー商品であるナボナは根強いファンが多くいる一方で、若い層が手に取りにくくなっていた。「そのため大きく変えるのではなく、ナボナが培ってきた安心感や温かさを大事に、従来のファンにも若い人にも手にとりやすいデザインを意識しました」。発売当初のゴシックでカラフルだったロゴをガラモンドで組み直し、金色に変更したが、文字の位置をずらした独特の組み方はそのまま残した …