編集部が街で気になった様々なデザイン
BOOK
木下龍也/岡野大嗣『玄関の覗き穴から差してくる光のように生まれたはずだ』
(ナナロク社)
- 装幀/大島依提亜
- 撮影/森栄喜
本書は男子高校生ふたりの視点で紡がれた、七月一日から七夕までの七日間の物語歌集。注目の新世代歌人2人による初の共著で、特別付録として舞城王太郎の小説が挟み込まれている。書店で手にしたときに気になるのが、この装幀。窓にカーテンがかかっている写真を使ったカバーに見えるが、実は全く違う2枚の写真を重ねている。表紙には窓の内側からベランダを写した写真、トレーシングペーパーに刷ったカバーには光が投影されているカーテンと壁の写真を使っている。いずれも写真家 森栄喜さんの作品だ。
「当初、ナナロク社さんから窓の写真をカバーに使いたいという話がありました。でも、これだけだと店頭に並んだときに、弱い気がして。それでトレペを使って、もう1枚、別の写真を重ねてみてはどうかと提案しました」と、大島依提亜さん。実際に重ねてみたところ、想像以上にカーテンのような効果が出たという。「それでもまだ地味かなと思っていました」と大島さんは言うが、発売後は装幀についてSNSで拡散してくれる人が多く、早くも増刷が決定したという。
CD
MONO NO AWARE『人生、山おり谷おり』
(P-VINE)
- AD/沖山哲弥
- 撮影/マスダレンゾ
2017年12月、ロックバンド「MONO NO AWARE」は、ファーストアルバム『人生、山おり谷おり』のアナログ盤を発売した。
ジャケットのテーマは“折り紙”。ピンクの紙と手のビジュアルが目を引く。「ばらばらにつくられた10曲をひとつのアルバムにまとめるにはどうすればいいかと、メンバーから相談されたのが始まりでした」と、デザインを手がけた沖山哲弥さん。
さまざまな曲をまとめるモチーフとして、沖山さんが提案したのは折り紙である。日本的なバンド名、日本語を大事にした歌づくり、そして紙1枚からさまざまな形(曲)を生み出すところが、バンドのコンセプトにも通じると考えたからだ。そのテーマのもと、タイトルから連想される折り紙を、その楽曲に合った折り方で表現。歌詞カードなどのビジュアルとして使っている。よく見ると、タイトルも折り紙。実際に文字の形に折ったものをベースに書体を制作した。
既にCDを買った人にも手に取ってもらうべく、アナログ盤は表1以外を新たにデザイン。同梱された2冊のZINEには写真家 マスダレンゾさんによるメンバーの撮り下ろし写真、折り紙のオリジナル折り図、書下ろしエッセイを収録するなど、ファン垂涎の企画になっている …