編集部が街で気になった様々なデザイン
BOOK
星野智幸『焔』
(新潮社)

- 装幀/篠崎健吾(新潮社装幀室)
- 挿画・題字/横山雄
『焔』は9つの短編とある人のモノローグで構成される、独自の構造を持つ小説。本文の構成も含め、新潮社装幀室の篠崎健吾さんがトータルでデザインを手がけた。「本編とモノローグ部分の関係性などを意識しながら本文の構成を考える中で、本文とカバーは有機的につながるものにしたいと思いました」。
カバーはビオトープGA-FSのストーングレーに、メタリックオレンジで箔押し。題字と絵は、イラストレーター 横山雄さんによるものだ。「焔だからオレンジと安直ですが、見せ方次第で新鮮に見えるのではないかと考えました。とはいえ、迫力のある箔ゆえにひとつ間違うと下品になってしまう。箔と相性のよい描き手を探す中で、横山さんの絵と出会いました」。横山さんには「踊っているような、燃え上がるような人を描いてほしい」と依頼。見る人によって人間、動物、文字など、さまざまなものに見える絵が完成した。
表紙は再生紙にマットスミで印刷して煤の印象に、別丁扉は裏面印刷で火の灯る印象に。「関わったすべての人たちが、そのイメージを共有できた結果」(篠崎さん)、細部に至るまで"焔"のイメージでつくりあげることができたという。
CD
FIVE NEW OLD 『Too Much Is Never Enough』
(トイズファクトリー)

- AD/河原光
- 撮影/梅川良満
FIVE NEW OLDのメジャーデビューアルバムは、トレードゴシックで記されたタイトルとブレのある不思議な写真が目をひく。「パンク、ミクスチャー、R&Bなど、メンバーの音楽ルーツはさまざま。それらを1つのイメージにまとめるのは難しく、現在の彼らの音からビジュアルのイメージを膨らませていきました」と、デザインを手がけた河原光さん。
彼らの音を聴いてイメージしたのが、80年代のバンド スタイル・カウンシルのジャケット。メンバーが白ホリスタジオで演奏している姿に、タイポグラフィを配したものだ。「バンドと言えばロックっぽいビジュアルにしてしまいがちですが、そうではなく80年代のお洒落感のあるビジュアルの方が、今の彼らには合うのではないかと思いました」。
撮影は、白ホリスタジオで。スタジオの中を歩くメンバーを、写真家 梅川良満さんが撮影した。実際はカラーで撮影しているが、デザイン時にモノクロに反転。同ポジの写真を重ねて多重露光のようなブレをつくり、そこに色を載せることで、どこか懐かしく、新しいデザインが生まれた。
オフィシャルグッズとして、アナログ盤を販売。CDとは少しレイアウトを変えており、このサイズならではのデザインを楽しむことができる …