IDEA AND CREATIVITY
クリエイティブの専門メディア

ブランドの魅力を発信する空間・体験のデザイン

ゴールはブランドと顧客が共鳴して生まれる「幸せな空間」

藤井一成(ハッピーアワーズ博報堂)

最大4時間半待ちの人気店となったリプトンの「Lipton Fruits in Tea」や「ピノフォンデュカフェ」など、さまざまなポップアップストアを成功させてきた、ハッピーアワーズ博報堂の藤井一成さん。ポップアップストアに共通するクリエイティブの考え方とは。

ハッピーアワーズ博報堂 藤井一成(ふじい・かずなり)
クリエイティブディレクター。1968年広島市生まれ。電通国際情報サービスを経て、博報堂入社。インタラクティブクリエイティブを軸に統合キャンペーンを数多く手がける。その後、グループ内ブティック、タンバリンに参加。2016年より同社代表に就き、「ハッピーアワーズ博報堂」に社名変更。戦略、クリエイティブ、体験デザイン、PR、デジタルなど、360ºの視野で構想から実践までを行う。

ブランド再構築のためのひとつの手段

──ポップアップストアというと、以前はSP施策の一環でしたが、最近はどのように位置づけが変わりましたか。

ポップアップストアは、ブランドにとって「ダイレクトにお客さんの反応を見ながら、未来の事業のあり方を検討・検証するための場」になりつつあります。その背景には、長らく製品中心のマーケティングで成功してきた企業が、顧客中心の考え方に移行している状況があります。

つまり、昔はいい商品をつくり、競合より優れたUSPを打ち出し、それが流通に乗ればモノは売れました。しかし、やがてモノだけでは差別化しづらくなり、メディア環境も変わり、生活者の方が力を持ってきた。モノ選びの中心がスペックから、受け手の感情や心地よさへと移ってきたんです。

その中でメーカーも、ECサイトで直販を始めたり、CRMでお客さんの声を直に聞いたりと新しい試みをしてきましたが、今はその最前線にポップアップストアがあるのだと思います。いよいよお客さんと直接対話をし、本当のターゲットは誰なのか、自分たちの製品や態度はどう受け入れられるのかを見る段階に来たということです。

──そうした目的でポップアップストアを捉えた場合、特にどんなブランドに向いていると言えるのでしょうか。

わかりやすい言葉で言えば、ロングセラーブランドです。「いいものを作ろう」の掛け声でずっとやってきたけれども、最近手応えが弱まったと感じる、お客さんが年をとり、新規顧客が減って、事業の成長につながるマーケティング指標が軒並み悪い──そんな危機感のあるブランドが向いていると思います。彼らは真面目に誠実にやってきたから、絶対的なブランド価値、製品価値を持っている。ノウハウ、歴史、ファン、実績、さらには工場や投資してきた土地といった資産もあって、まだ体力もあるが、次の時代に向けた転換がうまくいっていない。

そういう企業が新機軸のポップアップストアを出すことで、「あのブランドが!」と驚きを持って迎えてもらえる。よく知っている「あの」ブランドが、自分たちに向かって、懸命にトランスフォームしようとしている。そういう努力は好意的に受け止められるものです。過去のストックを潤沢に持っている企業ほど、ポップアップストアは意義深くなると思います。

紅茶をアクティブな飲み物に変えた「Lipton Fruits in Tea」

──大きな話題となった「Lipton Fruits in Tea」はどのように発想したのですか?

元々はポップアップストアをというお話ではなく、「リプトンブランドの売上を上げたい」というご相談から始まりました。その時考えたのは、新しい顧客を獲得して売上げを伸ばすには、紅茶の提供する体験価値から変える必要があるということでした。というのも、紅茶はコーヒーと比べると動きの少ない市場です。昔も今もクラシックな陶器のカップで飲み、「ミルクにしますか?レモンにしますか?」と常套句で聞かれます。メインユーザーである30代の主婦がスイーツと一緒に楽しんでいる状況にも変化がありません。こういう固定観念を全て取り払えれば、新しい人に振り向いてもらえるポテンシャルがあると考えました。

注目したのは、ハチミツや果物など、さまざまなものを入れて飲める、紅茶ならではのカジュアルさやバリエーションです。それを打ち出すために「in Tea」というフレームを作り、夏バージョンとして、自分の好みのフルーツをたくさん入れて持ち歩く「Fruits in Tea」という飲み方を提案しました。そして新たな価値を体験してもらうためにはリアルな場が必要と考え、ポップアップストアの企画にしたんです …

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