帰ってきた「inoui」デザインの哲学
資生堂が2023年9月、新生「inoui(インウイ)」を発売した。2002年からお休み期間を経ての再登場ということで、どんな姿で登場するのかワクワクした。今という時代における「inoui」をどうデザインしたのか、話を聞きに行った。
デザインプロジェクトの現在
2014年、パリでオープンした「Officine Universelle Buly」は"総合美容薬局"を謳ったショップとして話題を呼んだ。その東京店が代官山にオープン。オーナーでありコミュニケーションディレクターを務めるVictoire de Taillacさんの話を聞いた。
恵比寿駅から歩くこと10分弱。こじんまりした建物の半地下に位置するのが「Officine Universelle Buly(以下 ビュリー)」。閑静な住宅街の一画なのでちょっとわかりづらいが、たくさんのアーチのある風景が目を惹く存在。階段を下りて扉を開くと異空間が現れる。ここは、1803年に誕生したパリの"美容総合薬局"に魅了されたRamdane Touhami(以下 ラムダン)さんとVictoire de Taillac(以下 ヴィクトワール)さんが創り上げたショップだ。
"総合美容薬局"とは何なのか。「フランスではかつて、美容品と薬品を一緒に扱うのは当たり前で、家業としてやっている店がたくさんあったのですが、中でも『ビュリー』は抜きん出た存在でした」とヴィクトワールさん。18世紀後半から香水や化粧品の開発に着手し、1803年にパリのサントノーレ通りに"美容総合薬局"を構えたのが創業者のビュリー氏。美容の専門家であり、時代の仕掛け人としてのビュリー氏の存在は大きく、バルザックの小説のモデルになるほどだったという。優れた商品を開発するとともに、パリ万博にも出品し、ヨーロッパに名を馳せていた。
数々のストーリーに惚れ込んだラムダンさんとヴィクトワールさんは、「ビュリー」を再生させることにした。そして、香水と基礎化粧品を取りそろえた"総合美容薬局"として、独自に開発した化粧品をはじめ、世界中から選りすぐったオイルや美容用具などを提供する「ビュリー」を世に送り出したのだ ...