東京メトロに乗って上を見上げたときに目に留まるこのビジュアル。青空を背景に、風に吹かれる人たちの姿がすがすがしい。これは、クロレッツ ミントタブのさわやかさを伝えるべく、城﨑哲郎さん(博報堂プロダクツ)が制作したポスターだ。その企画から制作について聞いた。
スタジオでつくりあげた青空のもと撮影
実はオリエンを聞くまで勘違いをしていて、今回の課題はクロレッツのガムだと思っていたんです。当日、ミントタブであることを知り、商品について詳しくなったこともあって、新鮮な気持ちでオリエンを聞かせていただきました。僕が興味をひかれたのは、ガムとタブレットのすっきり感の長さの違い。ガムは口に入れた瞬間からすっきり感が40分間続きますが、タブレットは10分間で、そのかわり効果に即効性があるということでした。
その話を聞いたときに、タブレットの方がガムより瞬間性が高いと感じ、食べた瞬間に何かが変わるようなイメージが湧いてきました。その一つとして浮かんだのが、強い風が吹いた瞬間です。今回のオリエンでは通常のクロレッツの広告とは違うクリエイティブジャンプも課題としてあったので、瞬間性をテーマに具体的なビジュアルを探っていきました。
その中でたどりついたのが、このビジュアルです。青空を背景に、近い距離で人がすれ違った瞬間を切り取っています。今回のクリエイティブリレーでは東京メトロ車両のまど上での掲出が決まっていたので、乗客が見上げるような形でこのビジュアルを見ることも想定としてありました。
当初はもう少し下の位置から見上げるビジュアルを考えていたのですが、思いきってバストアップの表現に寄せました。これを表現するには、写真の力が非常に重要になると思い、アマナのフォトグラファーの曽根原健一さんと合成ではなく、ライブ感のある瞬間を切り取ろうという話をしました。
当初はロケで青空を撮影する予定だったのですが、運悪く曇りや雨の日が続いてしまい⋯。ぎりぎりまでロケの可能性を探っていたのですが、どうにもならず。プロデューサーからは別撮りした青空を合成してはどうかという提案がありましたが、それでは僕がイメージした絵に仕上がらないと思いました。僕は普段の広告の仕事でファッショントーンを手法として使うことがよくあります。そこで海外のファッション誌でよく見るような、ライティングで空をつくるのはどうかと相談してみたんです。
本当に唐突で、前日の朝に曽根原さんにお願いしたのですが⋯。当日、僕がスタジオに入ったとき、青空はすでにできあがっていました。曽根原さんが僕の意を汲んで、理想通りの青空をつくっておいてくれたんです。これは青い紙にライトを当ててグラデーションをつくりあげているのですが、結果として本物の青空を撮るよりも、僕のイメージに近いものになりました。
撮影は、モデルさんたちに風を当てながら、下からひたすら瞬間を切り取る。アングルが特殊だったので、実際にどれくらいネクタイがはためくのか、重なりがどう見えるのかなど想像しにくかったですね。いざ撮影が始まると、ネクタイが女性モデルの顔にかぶさってしまったり、ミントタブを持った手元が見えなくなってしまったり。撮影してみなないとわからないところもたくさんありましたが、それがまた面白いところでもありました。
これすごくいいけど惜しい!みたいなことが何度もあったのですが、今回は合成しないと決めていたので、これだ!と思えるシーンが切り取れるまで撮影を続けました。そういう意味では、ミントタブの瞬間性と同時に、撮影も瞬間性が肝になっていました。
「have a nice wind!」というコピーは、博報堂プロダクツのコピーライター 原田絢子に書いてもらいました。撮影が終わったとき、広告としてもっと伝わった方がいいと思い、入稿直前に原田にお願いしました。当初、「air burst」というコンセプトワードを入れていたのですが、風が吹いた瞬間の気持ちよさを伝えると同時に、多くの人にコミュニケーションする方向にこの広告を寄せていきたいと原田に伝え、出てきたコピーの一つが「have a nice wind!」でした。それを風の軽やかさや流れを出すような気持ちで、手描きで表現しました。
今回はクロレッツというブランドで新しい表現を試みましたが、今後は仕事と並行しながら、自分のアイデアをそのまま形にして、世の中に発信していくような取り組みに挑戦できたら、と思っています。プロダクトなのか、企画そのものなのか、何ができるかは、まだ自分でもわかりませんが、できるだけそういう機会を増やしていきたいですね。
城﨑さんの仕事
- AD/城﨑哲郎
- C/原田絢子
- 撮影/曽根原健一(parade)
- CG/神原誠
- ST/松野下直大
- HM/田名網智之
- CAS/池田圭子(needs+)
- PR/鈴木悠也、相馬脩平(amana)