ここ数年、米国の消費者マーケットは、ミレニアル(Millennial)と呼ばれる団塊によって、あらゆる部分が支配され、変えられていると言っても間違いないだろう。バケーション業界もその一つである。消費者の健康やウェルビーイングに関するオンライン新聞『WebMed』のマーケティング・ディレクター、ローラ・トロッターはこの動きを「ウエルネス2.0」と呼び、「これまでとは全く様相を変えたバケーション・トレンドが台頭してきている。ミレニアルたちのウエルネス志向から発祥したようだ」と語っている。

01 THE ART OF LIVING Retreat Centerの広告。
ミレニアルと健康
ミレニアルとは、18才から34才までの団塊を呼ぶ名称である。総勢8000万人のこの大団塊は、彼らの親であるベビーブーマー(7800万人)が米国社会に与えた、または与えているインパクトより、ずっと大きい影響を与えると言われている。60年代に青年期を迎えたベビーブーマーのように伝統的な社会組織に反抗する態度とは対照的に、彼らは社会に対してポジティブな影響を与えることを望んでいる。その一つが健康に関する考え方だ。
保険会社エトナが2013年に行った健康に関する調査を見ても、ミレニアルの健康観が、前世代のベビーブーマーやX世代(ベビーブーマーの後の3500万人という小団塊)と大きく違っていることがわかる。ベビーブーマーやX世代が「健康とは病気にならず、身長と体重のバランスを保つこと」だと考えているのに対し、ミレニアルは、「単に病気にならないのが健康ではなく、健康な食事やエクササイズに時間を費やし、関心を払うことが、健康の条件」だと考えている。彼らは医者に行くことをよしとせず、自分の健康は自分で管理したいと思っている。
2015年の春にニューヨークの広告会社 ディープフォーカスが行った「ボディ、マインド、ソール」なる調査によると、ミレニアルはウエルネス・ライフスタイルを保つために、可処分所得の4分の1を投じている。安いガソリンを求めてガソリンスタンドを走り回る一方、ヨガのためのスラックスには惜しげも無く100ドルを払う。
毎日“コネクテッド”(インターネットで繋がっていること)な生活を強いられているミレニアルにとっては、デトックス(デジタルから抜け出すこと)とウエルネスに貢献するバケーションには、他のどの団塊よりもずっと気前よく資金を投入するのである。
トラベル・マーケティングの変化
それゆえに、ミレニアルたちの財布の紐を解かせることにバケーション業界も努力し始めている。だが、それには従来のようなバケーション・パッケージでは効果がない。白浜のビーチに立てた大きなパラソルの下で、マイタイ片手にロマンス小説を読んだり、ヤシの木にかけられたハンモックで昼寝したりする光景――それがかつてのバケーションの理想的な過ごし方だった。だが、「ミレニアルは、それではもう満足しない。
彼らのバケーションのコンセプトは、前世代とは大きく変わっている。その一つは、健康管理。それがバケーションに組み込まれている必要がある」と、ニュージャージー州でInvigorate Travelという新しいタイプの旅行代理店を開いているメリッサ・ブルーノは言う。
彼女は自らを旅行エージェントと呼ばず、「トラベル・ライフスタイル・コンサルタント」と名乗っている。「旅行のための予約サービスを提供するだけでなく、旅行を通してこれまでとは違った健康的なライフスタイルを見つけるための旅行プランを立てる手伝いをする」ことが仕事だという。
2015年、5630億ドルのグローバル・ビジネスに成長したウエルネス・トラベルを売り物にする起業家は彼女だけではない。ヨガからデトックス・キャンプ、ヘルシー・クッキングを学ぶイタリア旅行から自転車で見るフランス・ボルドー旅行など、精神的、肉体的、心理的な向上やウエルビーイングをセールスポイントとするバケーションが増加している。
事実、2015年は一般の観光旅行ビジネスが6.9%の伸びを見せただけであったのに対し、ウエルネス・トラベルのカテゴリーはその倍の14%の伸びを示した。Global Wellness Instituteによると、2015年、ウエルネスにフォーカスを当てた旅行は全世界で6億9000万回行われている。
また、最も人気のあった旅行は ...